赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


赤い夕顔の花 44


「そうべえさん。私、権現城の奥がたのお万でござ
います」
「奥がたさま?」
「はい、お万でございます」
「あっ、奥がたさま。失礼しました。 奥がたさま。
そんなかっこうをして、どうなさったのですか」
そうべえが驚いて聞きました。


「昨夜、権現城は、下条の夜討ちを受けました。私
たちは、浪合の実家に帰る途中です。家臣と一緒
だったのですが、下条の追手を逃れているうちに、
はぐれてしまいました」
「奥がたさま。下条の夜討ちにあわれたのですか。
大変でしたのぅ。殿様は、ご無事かな」
「さあ、わかりません。城も焼けてしまったようで」


         つづく