2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

竹取物語

阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 6 皮衣が入っている箱を見ると、い ろいろの瑠璃をとりまぜ、彩色し て作ってありました。 皮衣は、紺青色でした。 毛の端は、ぴかぴか光っています。 比べる物がないほどの美しさでした。 「かぐや姫が、皮衣を欲しがるの も、無…

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阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 5 だから、五十両いただきたいと思 います。船が帰る時、そのお金を 託してください。お金を払ってい ただけない場合は、皮衣を返して くださるようお願いします」と。 「あと五十両払えば、貴重な皮衣 を手に入れることができる…

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阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 4 今も昔も、火鼠の皮衣は、容易に 手にいれることができない貴重な 物です。あきらめていたら、天竺 の聖者が、この国へ持ってきたと いう皮衣が、西の山寺にあるとい う噂を聞きました。 早速、朝廷にお願いし、朝廷の力 ぞえで…

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阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 3 何年かすぎました。 待ちに待った唐船がやってきました。 家来の小野が筑紫へ帰国し、都へ帰 ってくると聞き、安倍は小野の帰り を待ちました。 小野は、安倍がさしむけた足の速い 馬に乗って、筑紫から七日で都へ帰 ってきまし…

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阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 2 王けいは、手紙の返事を書きました。 「火鼠の皮衣は、唐にはありません。 噂には聞いたことがありますが、見 たことはありません。手紙に書いて あるように、この世にある物なら、も しかしたら天竺の人たちがこの国に 持って…

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阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 1 右大臣の安倍御主人(あべみうし) の家は、裕福な家でした。 一族も栄えています。 安倍は、「火鼠の皮衣」を手に入 れるため、日本にやってきた唐船 の王けいに、手紙を書きました。 「唐にあるという火鼠の皮衣を送 っていた…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 21 その後。 くらもちの皇子は、「これ以上の 恥はない。かぐや姫と結婚できな かったばかりか、世間の人がどう 思うだろうかと考えると、はずか しく思い、深い山の中へ入ってし まいました。 皇子の執事や仕えている人たち…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 20 かぐや姫は、訴えた金工たちをよん で、たくさんの褒美を与えました。 金工たちは、「期待したとおりだった」 といい喜んで帰りました。 ところが・・・。 その帰り道、皇子は、金工たちを血 が流れるまでたたいたのです…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 19 まことかと聞きて見つれば言の葉を かざれる玉の枝にぞありける かぐや姫は、歌とともに、玉の枝 も返しました。 一方、おじいさんは、あれほど皇 子と意気投合したのに、だまされ ていたのかと思うときまりが悪く、 しょ…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 18 金工たちは、「当然いただくべき お金です」と、口々にいいました。 かぐや姫は、「くらもちの皇子と、 結婚しなくてはならないのか」と 悩んでいた心がすっきりし、晴れ 晴れした気持になりました。 おじいさんをよんで…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 17 このさわぎをかぐや姫が聞き、金 工が差し出した文を読むと、こん なことが書いてありました。 「くらもちの皇子は、千日の間、身 分の低い金工たちと同じ家に隠れ住 み、立派な玉の枝を作らせました。 そして、玉の枝が…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 16 でも、くらもちの皇子から、まだ 玉の枝の謝礼をもらっていません。 ちゃんと謝礼をいただき、貧しい 弟子にやりたいのです」と。 おじいさんは、この金工たちは、何 をいっているのだろうと思いました。 くらもちの皇子…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 15 皇子は、おじいさんの歌を聞き、 歌を返しました。 我が袂今日かわければわびしさの 千種の数もわすられぬべし 二人が話をしていると、金工が六 人、庭へやってきました。 そして、一人が、文ばさみに文を はさんで訴えま…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 14 少しでも早く帰って、かぐや姫に この枝をみてほしいと思いました。 船にのると、追い風が吹き、四百 余日で帰ってくることができました。 仏さまが守ってくれたのでしょう。 昨日、難波から都へ帰りました。 海の水でぬ…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 13 山の側面を登っていくと、この世 の物とは思えないほど美しい花の 木が、何本も立っていました。 そして、山からは、金・銀・るり 色の水が、さらさらと流れています。 その川には、いろいろな色の玉で 作った橋がかかっ…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 12 すると・・・。 美しい天女がでてきて、銀の椀で 水をくんでいました。 あわてて船からおりて、「この山 の名前は」と聞くと、「蓬莱山です」 といいました。 これを聞いた時のうれしさ。 こんなにうれしかったことはあり…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 11 出航してから五百日目の朝八時頃。 海のむこうに、かすかに山が見え ました。 船を島に近づけ、山をみました。 その山は、非常に高く美しい山で した。 この山こそ、探している蓬莱山で はないかと思ったが、なぜか恐ろ …

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 10 ある時には、方向がわからなくな り、遭難しそうになったことも。 食料がなくなってしまい、上陸し た島で、草の根を食べたこともあ りました。 おそろしい妖怪に食べられそうに なったことも。 貝を食べ、命をつないだこ…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 9 おじいさんが、皇子に聞きました。 「この木は、どんな所にはえてい たのかね」と。 すると、皇子が話を始めました。 二年前の二月十日。難波から船に 乗り出発しました。 蓬莱山の方向がわからないので、 心細かったけれど…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 8 すると、姫が。 「私は、じいのいうことを、ことわ ることができなかったので、くら もちの皇子には、蓬莱の玉の枝 を・・・と、いいました。蓬莱の玉 の枝など、たやすく持ってくるこ とはできないだろうと思ったのに、 簡…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 7 「くらもちの皇子は、姫が希望し た蓬莱の玉の枝を持ってきたので すよ。姫、もう皇子の申し出をこ とわることはできません。自宅へ も寄らず、旅の姿のまま、姫の所 へきたのです。皇子と結婚しなさい」 おじいさんがいい…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 6 おじいさんは、皇子が持ってきた 玉の枝と手紙を持って、かぐや姫 の部屋へ行きました。 いたずらに身はなしつとも玉の枝を たおらでさらに帰らざらまし かぐや姫は、玉の枝を手にとってみ ました。 「本物かしら」 姫は、…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 5 かぐや姫は、くらもちの皇子のう わさを聞き、「くらもちの皇子に は、負けてしまったか・・・」と悩 みました。 「くらもちの皇子が、旅から帰っ てきました」 召使いが告げたので、おじいさん が皇子に会いました。 「苦…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 4 「くらもちの皇子は、船に乗って、 ただいま帰ってきました」 朝廷には、そう報告しました。 おおぜいの人が、難波の浦へ、皇 子を迎えにきました。 皇子は、旅に疲れたという様子で、 ぐったり座っています。 皇子は、難波…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 3 そして、皇子も金工たちと一緒に、 その家に籠って、玉の枝の制作を 見守りました。 所領の荘園十六ヶ所をはじめ、全 財産を投じて、金工たちに玉の枝 を作らせたのです。 金工たちは、かぐや姫が希望した 通りに、根は銀・…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 2 「くらもちの皇子は、こんなふう に、みんなに見送られて出発しま した」と、人々に信じさせたのです。 三日後。 皇子は人目につかないように、船 で帰宅しました。 帰宅した皇子は、計画通りに、当 時の一流の金工六人を集…

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くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝 1 くらもちの皇子は、はかりごとに たけた人でした。 「体の具合が悪いので、筑紫の温 泉へ行き療養してきます」 そういって、朝廷から休暇をもら いました。 そして、かぐや姫には、「これか ら玉の枝をとりに行ってきます」…

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石作の皇子と仏の御石の鉢 4 白山にあへば光の失するかと はちを捨てても頼まるるかな かぐや姫はあきれてしまい、返歌 はしませんでした。 皇子は、弁解をしながら帰って行 きました。 偽の鉢を捨ててからも、あつかま しくも「頼まるるかな」といった 石…

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石作の皇子と仏の御石の鉢 3 かぐや姫は、「鉢に光があるか しら」と、何度も鉢をみました。 でも、何の光もありません。 置く露の光をだにもやどさまし 小倉の山にて何を求めけむ かぐや姫は、その鉢を、皇子に突 き返しました。 皇子は、鉢を門口になげ捨…

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石作の皇子と仏の御石の鉢 2 三年後。 皇子は、召し使いたちが探してき た鉢の中から、かぐや姫の所へ持 っていく鉢を選びました。 その鉢は、大和の国十市郡にある 山寺の、びんずるの前にあった鉢 でした。 皇子は、その鉢に、たっぷり煤墨 を塗り、錦の…