2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 83 第七章 新しい出発 13 「そんな・・・」 そういったまま、きよはだまってしまいました。 いくら明神さまが話しかけても、きよは何も答 えません。 「明神さま。きよは、だいじょうぶでしょうか」 手長が心配して聞きまし…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 82 第七章 新しい出発 12 「そう。次郎は、いつもとちがう場所で、火をた いたのじゃ」 「次郎さんは、なぜそんなことをしたのでしょう」 「おまえが、じゃまになったからじゃ」 「私が、じゃま?」 「そうじゃ」 「私が、…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 81 第七章 新しい出発 11 すると、 「次郎さんが・・・」 「次郎がどうした」 「次郎さんがたいてくれた火が」 「きよ。火がどうしたのじゃ」 「火が南にともっていたの」 「何、火が南にともっていたと。きよ、それは、 ほ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 80 第七章 新しい出発 10 「明神さま。今、きよを助けました。しかし、 意識がもどりません。どうしたらよいでしょ うか」 「きよを、わしのやしきへ運んでくれ」 「はい、わかりました」 手長と足長は、明神さまのやしきへ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 79 第七章 新しい出発 9 どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。 手長の手に、何かひっかかりました。 「あなた。何かひっかかったわ」 二人は、力をあわせてひきあげました。 きよでした。 きよは、水を飲んでいるのか、ぐ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 78 第七章 新しい出発 8 「手長、もうやめよう。こんなことをしていると、 わしらまでうずにまきこまれてしまう」 「あなた。きよのために、もう少しがんばりまし ょう」 「じゃあ、今度はあちら側をさがそう」 「あなた。う…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 77 第七章 新しい出発 7 足長は手長を背負い、ごぉーと音をたてている うずのまわりを、ゆっくり歩きました。 「明神さま。これからうずのまわりを歩きます。 どうかわしらをしっかりお守りください」 手長と足長は、心の中…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 76 第七章 新しい出発 6 「あなた、何をいっているの。私たちが、きよ を助けるんでしょ。足長、私を背負って、淵の まわりをゆっくり歩いてちょうだい」 「手長。そんなことをしたら、わしらもうずに まきこまれてしまうぞ…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 75 第七章 新しい出発 5 「わかりました。すぐ行きます」 「手長、足長。きよのこと、たのんだぞ」 「はい、承知しました」 手長と足長は、いそいで小坂観音沖の淵へ向か いました。 淵へつくと、淵は大きなうずをまいていま…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 74 第七章 新しい出発 4 この世で、次郎さんと会うことができて、私は 幸せだった。 次郎さん、ありがとう。 とうちゃん、かあちゃん。大切に育ててくれて ありがとう。 私、二人のこどもに生まれて幸せだった。 生まれ変わ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 73 第七章 新しい出発 3 五分後。 「やっぱり変だ。泳ぐ方向を変えなくては」 そう思った時、目の前に大きなうずがあらわれ ました。 「あっ、うずだ」 きよは、大きなうずにまきまれてしまいました。 もがけばもがくほど、…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 72 第七章 新しい出発 2 しばらくすると、西山にぽっと小さな火が ともりました。 「あっ、次郎さんだ。今日も火をたいてく れたのね。ありがとう」 きよは、西山にともった小さな火をみてほ っとしました。 しかし、何か変…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 71 第七章 新しい出発 1 九月八日。 残暑のきびしい日でした。 今日は、次郎と会う日。 「とうちゃん、かあちゃん。これから次郎さん の所へ行ってきます」 「きよ、気をつけて行くんだよ。次郎君によろ しくな」 父と母が、…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 70 第六章 湖を泳ぐ娘 18 私は、今でも次郎さんが大好き。 でも、次郎さんの心の中には、私以外の人が住 んでいる。 その人は、大きな農家の一人娘。 その人と結婚すれば、次郎さんは一生気楽に暮 らしていけるものね。 だ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 69 第六章 湖を泳ぐ娘 17 「おらが好きなのは、きよちゃんだけだよ」 次郎はそういったけれど、きよには次郎のこと ばが白々しく聞こえました。 「次郎さんのうそつき。次郎さんの心の中には、 その人が住んでいるのに、な…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 68 第六章 湖を泳ぐ娘 16 「きよちゃん。なぜわかるの」 「次郎さんが、大好きだからよ。だから、わか るの。次郎さんには、その人と会う気はないか もしれない。でも、その人、次郎さんが働いて いるたんぼや畑へ、会いに…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 67 第六章 湖を泳ぐ娘 15 「おれが、うそつき?」 大好きなきよから、うそつきといわれ、次郎は ショックでした。 「次郎さん。うそつきなんていって、ごめんね。 でも、次郎さんはほんとのことをいっていない」 「きよちゃ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 66 第六章 湖を泳ぐ娘 14 「そんなことをいって、次郎さんは私と会うの がいやになったんじゃないの」 きよがさみしそうにいいました。 「考えすぎだよ」 「じゃあ、見合いをした人と会うため」 「その人とは会っていない」…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 65 第六章 湖を泳ぐ娘 13 「次郎さん。ぼんやりして、どうしたの。具合で も悪いの」 きよが、心配して聞きました。 「いや、なんでもない」 次郎が、ぼそっといいました。 その夜、きよは一人でしゃべっていました。 次の…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 64 第六章 湖を泳ぐ娘 12 次郎の心の中で、きよに対する疑いがどんど んふくらんでいきました。 その一方で、次郎は思いました。 おらは、小さな時から、きよちゃんが大好き だった。 そんなきよちゃんに、なぜ疑いの気持を…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 63 第六章 湖を泳ぐ娘 11 きよちゃんが、いくら泳ぎが達者でも、こんな に早く湖を泳いでくるなんておかしい。 どう考えても、変だ。 きよちゃんは、魚になったような気がするとい っていたが、魚になどなれるわけはない。 …

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 62 第六章 湖を泳ぐ娘 10 「次郎さん。私ね、湖を泳いでいると、魚になっ ちゃったのかなって、思う時があるの」 「魚になる?」 「そんな時は、すーいすーいと、早く泳げるの。 誰かが、たぶん神様でしょうね。私を守って…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 61 第六章 湖を泳ぐ娘 9 「きよちゃん。どうやったら、こんなに早くここ へこられるの」 「私、次郎さんと会う日には、無事に次郎さんの 所へたどりつけますように。一分でも早く、次郎 さんに会えますようにと、心の中で祈…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 60 第六章 湖を泳ぐ娘 8 その後。 きよが、次郎の所へたどりつく時間が、だん だんに早くなりました。 会うたびに、十分二十分と、早くなっていっ たのです。 「きよちゃん。今夜は、ずいぶん早かったね。 いつもより早く家…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 59 第六章 湖を泳ぐ娘 7 「次郎さん、魚よ」 「魚?」 「泳いでいる途中、つかまえたの。後で焼いて 食べよう」 きよは、次郎に魚をわたしました。 「きよちゃん。早く髪をかわかさないと、かぜ をひくよ」 次郎は、自分のて…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 58 第六章 湖を泳ぐ娘 6 「だいじょうぶ、次郎さん。気をつけて泳ぐから。 今夜は明るかったから、泳ぎやすかったわ。湖の 水が、きらきら光って、とてもきれいだった」 きよがいいました。 「きよちゃん。いくら明るくても…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 57 第六章 湖を泳ぐ娘 5 「無事に、湖をわたり終えますように」と祈り ながら。 「次郎さん、こんばんは」 「きよちゃん。今夜は、ずいぶん早かったね。 どうしたの」 「私、湖を泳いできたの」 「えっ、湖を?」 次郎は、驚…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 56 第六章 湖を泳ぐ娘 4 すると・・・。 「あっ、次郎さんだ。約束通り、火をたいてく れたのね。ありがとう、次郎さん。今、行くか らねー」 きよが、大声でさけびました。 みると、西の山に、小さな火がともっています。 …

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 55 第六章 湖を泳ぐ娘 3 「私には、きよの気持が、よくわかるわ。危険 をおかしてまでも、一分でも早く、大好きな人 に会いたいという気持。男のあなたには、わか らないでしょうね」 手長がいいました。 「わしにだって、わ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 54 第六章 湖を泳ぐ娘 2 「何の音だろう」 手長と足長は、あたりをみわたしました。 月あかりに照らされてみえたもの、それは湖を 泳いでいる娘の姿でした。 娘は、頭に荷物をのせ泳いでいます。 「どこの娘じゃろ」 近づい…