火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 61


第六章 湖を泳ぐ娘 9


「きよちゃん。どうやったら、こんなに早くここ
へこられるの」
「私、次郎さんと会う日には、無事に次郎さんの
所へたどりつけますように。一分でも早く、次郎
さんに会えますようにと、心の中で祈るの」


「きよちゃんはいつもそんなふうに祈っているの」
「祈っているわ。次郎さんのことも、元気で暮ら
せますようにと、毎日祈っている」
きよのことばを聞き、次郎は思いました。
おらは、暗い夜道を、何時間もかけて訪ねてくる
きよちゃんのことを、一度でも祈ったことがあっ
ただろうかと。


          つづく