2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまとの約束

女神さまとの約束 12 「とうちゃん。 待っていてね。 私、八ヶ岳へ行って、黄金色の花 をさがしてくるから」 病人を、一人残していくことは心 配でした。 でも、黄金色の花さえみつかれば、 とうちゃんが元気になれるかもし れない、ふくはそう思ったので…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 11 そうすれば、おとうさんはじきに 元気になれるでしょう。 おとうさんが元気になったら、黄 金色の花が咲いている場所で、病 人の世話をしてほしいのです。 どんなことがあっても、けっして 黄金色の花が咲いている場所をは なれてはい…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 10 馬は、口に手紙をくわえています。 ふくは、その手紙を読みました。 「私は、八ヶ岳の女神です。 大 雪の夜、あなたの家に泊めていた だいた者です。 あの夜は、あり がとう。 あなたは、ほんとうに 心のやさしい娘ですね。 あなたの…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 9 「神様。どうかとうちゃんを助け てください。 お願いします」 ふくは、一心に神様にお願いしま した。 しかし、長者は、いっこうによく なりません。 とうとう、おきあがることもでき なくなってしまいました。 ふくは、必死で長者の看…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 8 しかし・・・。 何日たっても、長者はよくなりま せん。 物が食べられなくなり、長者は一 日ごとに弱っていきました。 「ふくや。わしは、もうだめだ。 長くは生きられないだろう。 わ しが死んでも、一人でしっかり生 きていくのだよ」…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 7 ふくの心の中は、大雪の夜に泊まっ た女の人のことでいっぱいでした。 二人は、困っている人をみると、知 らん顔ができず、ときどき旅人を泊 めてあげていたのです。 夏のある朝。 「ふく・・・ふくー。 早くきておくれ」 ざしきの方か…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 6 女の人はぐっすり休み、次の朝に はすっかり元気になりました。 「お世話になりました。 大切な おかあさんの着物、おかりしてい きます」 女の人は何度も礼をいい、屋敷を あとにしました。 「大雪の夜、あの人はどこへ行く つもりだっ…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 5 女の人は、土間のすみで、きがえを しました。 きがえをすませ、いろりのそばにす わった女の人をみて、ふくはびっく りしました。 女神さまのような美しい人だったか らです。 女の人は、やさしい笑みをうかべて いました。 「なんて美…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 4 つぎはぎだらけの着物をきた、貧 しいみなりの人でした。 「すぐきがえをもってきます。 待っていてくださいね」 ふくは、母の部屋へ、きがえをとり に行きました。 「この着物は、なくなったかあちゃ んの着物です。 さあ早く、この着 …

女神さまとの約束

女神さまとの約束 3 「どなたかな?」 長者が、やさしく声をかけました。 「旅の者です。今夜泊めていただ けないでしょうか」 戸をあけると、女の人が立ってい ました。 女の人は、雪でびっしょりぬれ、寒 さのためぶるぶるふるえています。 「寒かったで…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 2 ちらちら降っていた雪も、いつの まにかぼたん雪にかわりました。 雪は、どんどん積もっていきます。 庭も畑も山も、雪で真っ白になり ました。 そして、夕方には吹雪になりました。 その夜のことです。 「とんとん、とんとん」 だれか…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 1 八ヶ岳のふもと、中山峠の近くに、 さいのかわらという山深い里があ ります。 そこには、長者屋敷とよばれる大 きな家があり、長者と娘が仲良く くらしていました。 娘の名前は、ふく。 父親おもいのやさしい少女でした。 「ただいま」 …

雪割草

雪割草

雪割草

雪割草

雪割草

雪割草

雪割草

守屋山に黄金色の花が咲いた

守屋山に黄金色の花が咲いた 14 明神さまは今日も風になって、諏訪 湖のまわりをみまわりしています。 明神さまは黄金色の花をみるたびに、 心のやさしい少女をなつかしく思い だします。 「あの少女は本当に兄思いのやさし い少女じゃったのー」 明神さま…

守屋山に黄金色の花が咲いた

守屋山に黄金色の花が咲いた 13 「兄ちゃんはきっとよくなる。 兄 ちゃんはきっと優しい人になれる」 少女は何年ぶりかの兄の笑顔をみ てそう思いました。 重かった少女の心は、兄の笑顔を みて、少し軽くなりました。 それから四百年がたちました。 雪が…

守屋山に黄金色の花が咲いた

守屋山に黄金色の花が咲いた 12 明日兄にも黄金色の花をみせてお やり。 一本くらいは兄にも見え るだろうから…。 兄も今度こそ よくなるだろう。 おまえの苦労 ももう少しじゃ。 いつまでも今 のやさしい気持を忘れないようにな」 そういうと、明神さまは…

守屋山に黄金に色の花が咲いた

守屋山に黄金に色の花が咲いた 11 この花は何というか知っているか。 福寿草というのじゃ。 おまえが 兄にやさしいことばをかけるたび に、一本ずつここに咲いたのじゃ。 この黄金色の花は、誰にでも見え る訳ではないぞ。 心のやさしい 人にしか見えない…

守屋山に黄金色の花が咲いた

守屋山に黄金色の花が咲いた 10 そこには百本…いや千本…ニ千本、 数えきれない位の黄金色の花が咲 いていたのです。 黄金色の花は太陽にあたり、きら きらと輝いていました。 「なんてきれいな花だろう」 少女は黄金色の花にみとれていま した。 するとま…

守屋山に黄金色の花が咲いた

守屋山に黄金色の花が咲いた 9 その声はいつか聞いたことのある 明神さまの声でした。 少女は声のする方にむかって歩い ていきました。 どのくらい歩いたのでしょうか。 ふもとのひあたりの良い場所につ いた時、少女はあっと驚きの声を あげました。 何百…

守屋山に黄金色の花が咲いた

守屋山に黄金色の花が咲いた 8 どこをさがしても、黄金色の花など ありません。 枯葉が一面に落ちているだけでした。 あちこち歩きまわり疲れた少女は、 枯葉の上に腰をおろしました。 そしていつの間にかねむってしまっ たのです。 「少女よ、少女よ。 目…

守屋山に黄金色の花が咲いた

守屋山に黄金色の花が咲いた 7 少女は守屋山にむかって、足早に 歩いて行きました。 守屋山についた少女は、山の中を あてもなく歩きまわりました。 黄金色の花といっても、どんな形 をしているのか、どのくらいの大 きさなのか少女にはわかりません。 でも…

守屋山に黄金色の花が咲いた

守屋山に黄金色の花が咲いた 6 「少女よ、これくらいの苦しみや 悲しみに負けるなよ。 おまえの ことはこのわしがしっかり守って やるぞ」 明神さまは少女の顔をみるたびに、 心の中でそうつぶやくのでした。 それから三年三カ月がすぎました。 山深い村にも…

守屋山に黄金色の花が咲いた

守屋山に黄金色の花が咲いた 5 そんな兄に少女はどう接したら良 いのかわからず、ただおろおろす るばかりでした。 心のやさしい少女でしたが、そん なことがたび重なると、兄をうと ましく思うこともありました。 「私は兄ちゃんのことをこんなに 思ってい…

守屋山に黄金色の花が咲いた

守屋山に黄金色の花が咲いた 4 少女は明神さまにいわれたように、 今まで以上に兄にやさしく接しま した。 しかし心を病んでいる兄には、少女 のやさしい気持など少しも通じませ んでした。 それどころか、兄はいらいらして大 声をだしたり、理由もなく少女…