赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 7 そんな盛永でしたが、奥がたのお万とこども の長五郎には、やさしく接していました。 そして、もう一人、小姓の犬坊にも。 「どちらがほんとの盛永さまなのかしら。城 主だったら、まず領民のことを考えてほしい」 お万…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 6 「あの山には近づくな。殿様が鹿狩りをして いるから」 領民たちは、こどもたちにいいきかせました。 盛永は、何かに夢中になると、前後のみさか いがなくなってしまう人だったのでしょうか。 奥がたは、お万。 心のやさ…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 5 盛永は、重臣たちの忠告をききません。 家臣の中にも、おごりたかぶっている盛永 に、不満をもっているものが大勢いました。 中には、吉岡城の下条時氏に通じていたも のもいたようです。 盛永は、鹿狩りが大好きでした…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 4 盛永は、仕事をなまけているものには、容赦 なく罰をあたえました。 「城なんか、一つあればいい。なぜ三つも城 を作るのじゃ。そんな金があったら、年貢を 安くしてほしい」 「石を運ぶ仕事は、もうたくさんじゃ」 「殿…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 3 しかし、その期待は、みごとにうらぎられま した。 盛永は、先代の城主以上に、領民たちから厳 しく年貢をとりたてました。 「こんなに年貢が高くては、暮らしていけない」 「嫁とりにまで、税をかけるなんて。これで は…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 2 関と隣の城・下条との対立は激しく、数十年に わたり、何度も戦がくりかえされました。 そして、大下条周辺の十八ケ村が、権現城の領 地になりました。 しかし、高地が多く、農作物の収穫はあまり期 待できません。 城が…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 1 信州の最南端に、「権現城」という城がありま した。 関氏の城で、「和知野城」ともよばれています。 今からおよそ五百七十年前。 文安五年(1448年)。 関の一族は、戦乱を逃れ、伊勢から信州の新野 に移ってきまし…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 31 その後。 青い獅子頭を寺の外へだすと、なぜかはげ しい雷雨になりました。 そのため、日照りで困っている時には、そ の獅子頭を祭り、雨乞いをするそうです。 男が彫った獅子頭は、「雨乞いの青獅子」と よばれ、…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 30 和尚は、男の形見の獅子頭を持って、寺へ 帰りました。 そして、本堂へ獅子頭を供えました。 次の日。 和尚は、檀家の人と一緒に、不動滝へ男の 遺体をさがしに行きました。 滝つぼから男のなきがらをひきあげると…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 29 だから、わしは二度と外へでることはでき ないとあきらめておったのじゃ。でも、お まえが気づいてくれた。どんなにうれしか ったか。 仏師よ、おまえはすばらしい仏師じゃ。わ しは、おまえの志をついで、伊那谷…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 28 「ああ、こわかった。こんなこわい思いをし たのは、初めてじゃ。わしは、悪い夢をみて いたのだろうか。いや、夢ではない。わしは、 たしかに青い獅子をみた。うおーっとさけぶ 不気味な獅子の声も聞いた。夢でな…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 27 「ごろごろっ」 「ごろごろっ」 「ぴかっ、ぴかっ」 すさまじい雷でした。 「ぴしゃっ」 「ぴしゃっ」 雷が、近くに落ちたようです。 「うおーっ、うおーっ」 はげしい雷雨の中、獅子がひっきりなしに不 気味なさ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 26 その時、 「ごぉーっ」 滝つぼの方から、不気味な音が聞こえてきま した。 すると、滝つぼの水面に、真っ青な獅子が浮 かびあがってきました。 「うおーっ」 獅子は一声ほえると、きっとした目で、空を にらみまし…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 25 そうさけぶと、男は滝つぼにむかって、獅子 頭をなげつけました。 「あっ」 和尚が声をあげた時には、獅子頭は滝つぼに 落ちていました。 「わしには、すばらしい獅子頭にみえたが・・・」 和尚は、小声でつぶやき…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 24 その後、滝へ行き、男は身を清めました。 身を清めた男は、獅子頭をもって、滝の上の 方へ登っていきます。 適当な岩をみつけると、獅子頭をその岩の上 へおきました。 男は、獅子頭をじっとみています。 どのくら…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 23 やっと立ちあがった男は、よろよろしながら 滝へむかいました。 和尚は、男にみつからないように、そっと後 をつけました。 滝へついた男は、不動明王にお参りしました。 「不動明王さま。やっと獅子頭が彫りあが…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 22 男は、ちゃんと食事をしているのでしょうか。 和尚は、男が何日も食事をしていないのでは ないかと思いました。 うす暗い小屋の中で、男の目だけが異様に光 っています。 和尚は、男の変わりようにびっくりしまし…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 21 さわやかな秋になりました。 不動滝のまわりの木々も、赤や黄色に紅葉 しはじめました。 「仏師に会ってから、五カ月。依頼した獅子 頭は、どのくらいできただろうか」 和尚は、不動滝のそばにある仏師の小屋を訪 …

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 20 やっと、獅子頭が彫りあがりました。 「獅子よ。ようやく彫りあがったぞ。おまえ は、わしが初めて彫った大切な獅子頭じゃ。 さあ、獅子よ。早くでておいで」 男は、大声で獅子をよびました。 そして、彫りあがっ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 19 苦労したのは、上顎と下顎の部分。 いくら彫っても、うまくいきません。 「あごを彫るのは、むずかしいのう」 男は、あごの部分を何度も彫りなおしました。 上顎と下顎をきりわけることも、難しい作業 でした。 そ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 18 「獅子よ。やっと荒彫りが終わったぞ。早く目を さましておくれ」 男は、いとおしそうに何度も獅子頭をなでました。 荒彫りが終わると、目・まゆげ・鼻・あごなどを、 一つ一つていねいに彫っていきました。 「ほ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 17 のみがきれなくなると、滝へ行き滝に打たれ ます。 そして、滝にかかる虹をみながら、男は一心 にのみを研ぎました。 のみを研いでいると、ざわざわしていた心が 消え、心が静かになりました。 男は、寝る間もおし…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 16 「不動明王さま。これから、獅子頭の荒彫り を始めます。木の中から、元気な獅子があら われますように」 男は、そう祈りました。 そして、滝にうたれ身を清めました。 小屋へもどった男は、木の前で何度も深呼吸 …

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 15 「獅子よ。早く目をさましておくれ。そして、 外へでておいで。待っているぞ」 男は、木にむかって話しかけました。 まず、獅子頭の大きさを決め、ていねいに木 を切りました。 そして、下絵が描けるように、表面…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 14 「よーし、りっぱな獅子頭をつくるぞ」 男は、改めて心にちかいました。 真っ赤な大きな顔。 黄金色の髪。 黒々した太いまゆ。 かっとみ開いた大きな目。 獅子鼻とよばれるまあるい大きな鼻。 こどもを飲みこんで…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 13 「この寺の獅子舞は、屋台を使っている。大き な木の枠に車輪をつけ、竹で骨組みをつくる。 そして、その上に幌をかけるのじゃ。屋台の長 さは、約七メートル。幅は、二メートル。高さ は、二メートルくらいあるか…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 12 「瑠璃寺は、何百年も続いている由緒ある寺。 その寺にふさわしい獅子頭を、わしは彫ること ができるだろうか」 男は、不安でした。 「わしは、若い時から、いくつもの仏像やお面 を彫ってきた。だから、獅子頭だ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 11 木がみつかると、のみやかんななど、木を彫る ための道具の手入れを始めました。 仕事を始める前には、まず滝へ行き、不動明王 にお参りします。 「わしは、獅子頭をみたこどもが、びっくりし て泣きだすような、…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 10 男は木地屋へ行き、桐やイチョウ・栃・楠など の木をみせてもらいました。 でも、気にいった木はみつかりません。 二週間後。 やっと、気にいった木がみつかりました。 それは、大きな桐の木でした。 「この木の中…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 9 晴れた日には、滝一面に太陽があたり、滝から 落ちる水しぶきに、美しい虹がかかります。 男は滝の虹をみた時、「なんて美しい虹だろう」 と思いました。 虹をみていると、汚れてしまった心が、きれい に洗われるよ…