鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 7 「ばたんっ」 大きな音をたて、鹿がたおれました。 「黄金色の鹿をいとめたぞー」 そうさけんだ時、鹿はどこかへ姿を消してしまい ました。 あっという間のできごとでした。 「おかしいな。たしかに首に矢が…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 6 「わぁーっ。黄金色の鹿だぁ」 三郎は、びっくりして大声をあげました。 「うー、うー、うー」 「わん、わん、わん」 タケルとチハヤが、鹿のまわりでほえています。 鹿が、三郎にむかって突進してきました…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 5 二匹の犬は、なきやみません。 ますますはげしくないています。 「どうしたのじゃ。近くに何かいるのだろうか」 三郎は、あたりをみまわしました。 「がさっ」 「ごそっ」 どこかで音がしました。 すると、 …

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 4 「さあ、何かいるのかも。和尚さま。じゃあ、これ から裏山をみてくるで」 「三郎さ。たのんだぞ」 和尚は、三郎に裏山をみてくれるように頼みました。 三郎は、いそいで裏山へ行きました。 「うー、うー」 …

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 3 三郎は、鹿だけでなく、うさぎやいのししなども とっていました。 三郎の家は、田畑や山林をたくさん持っています。 村一番の金持でした。 「和尚さま。タケルとチハヤが、裏山でほえてい るが、どうかした…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 2 寺には、「タケル」「チハヤ」という、二匹の犬 がいます。 利口な犬でした。 和尚は、二匹の犬を、わが子のようにかわいがっ ています。 秋のある日。 「うー、わん、わん」 「わん、わん、わん」 タケルと…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 1 信州の伊那谷、三穂村に「立石寺」という寺があり ました。 天安元年(857年)に創建された、真言宗の古い 寺でした。 立石寺は、伊那西国三十三番札所、第一番の寺。 聖徳太子作といわれる十一面観音像…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 94 第七章 新しい出発 24 「気をつけて帰ってくださいね。明神さまに よろしく」 きよは、二人の姿がみえなくなるまで見送り ました。 「今日から、私の新しい生活が始まるのね」 きよは、そっとつぶやきました。 「そうじ…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 93 第七章 新しい出発 23 すると、 「きよ、静岡へついたかな。おまえはこれから そこで暮らすのじゃ。わしの友だちのばあさん と一緒にな。きよ、記憶がもどったら、いつで も諏訪へもどっておいで。待っているぞ」 どこか…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 92 第七章 新しい出発 22 「きよ、よろしく」 おばあさんが、にこにこしながらいいました。 「こちらこそ、よろしく。お世話になります」 「こんなかわいい人と暮らせるなんて、私うれし いわ」 おばあさんはうれしそうでし…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 91 第七章 新しい出発 21 次の朝。 「きよ。目がさめたか」 「はい。あなたは?」 「わしは、足長じゃ。そして、こちらが手長」 「私を、淵から助けてくれたかたですね。その節は、 大変お世話になりました。助けていただき…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 90 第七章 新しい出発 20 「やはり、きよは何もおぼえていないのですね。 自分の名前も、大好きだった次郎のことも、み んな忘れてしまったなんて。かわいそうに」 手長は、きよの気持を思うとやりきれません。 「手長、足…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 89 第七章 新しい出発 19 「夜遅くにもうしわけない。これから、きよを 静岡の知り合いまでつれていってほしい」 「えっ、きよを、静岡へつれていくのですか」 手長が驚いて聞きました。 「そうじゃ。きよは、自分の名前も…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 88 第七章 新しい出発 18 きよは強いショックを受け、すべての記憶がなく なっているようでした。 記憶がないまま、生まれ育った諏訪で暮らすのも つらかろう。 きよが生きていることを知ったら、次郎がまた何 かするかもし…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 87 第七章 新しい出発 17 「次郎さんて、誰」 「おまえが、この世で一番好きな人じゃ」 きよは、大好きだった次郎のこともおぼえて いないようでした。 「私が、淵でおぼれたのですか」 「そうじゃ。大きなうずにまきこまれ…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 86 第七章 新しい出発 16 三日後。 きよの意識がもどりました。 「きよ。気がついたか。よかったのぅ」 明神さまが、ほっとした顔でいいました。 「きよ?」 「おまえの名前じゃ」 「私の名前は、きよというのですか」 「そ…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 85 第七章 新しい出発 15 次郎も、主人の姪に会うまでは、きよのことが 大好きだった。 でも、みよに会ってから、次郎の心はだんだん に変わっていったのだろう。 そして、次郎は、大きな農家のむこになりたい と思うように…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 84 第七章 新しい出発 14 「手長、足長。今日はご苦労じゃった。家にもど って、ゆっくりお休み。きよのことは、心配する な。後は、わしが世話をするから」 「じゃあ、明神さま、よろしくお願いします」 手長と足長は、家…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 83 第七章 新しい出発 13 「そんな・・・」 そういったまま、きよはだまってしまいました。 いくら明神さまが話しかけても、きよは何も答 えません。 「明神さま。きよは、だいじょうぶでしょうか」 手長が心配して聞きまし…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 82 第七章 新しい出発 12 「そう。次郎は、いつもとちがう場所で、火をた いたのじゃ」 「次郎さんは、なぜそんなことをしたのでしょう」 「おまえが、じゃまになったからじゃ」 「私が、じゃま?」 「そうじゃ」 「私が、…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 81 第七章 新しい出発 11 すると、 「次郎さんが・・・」 「次郎がどうした」 「次郎さんがたいてくれた火が」 「きよ。火がどうしたのじゃ」 「火が南にともっていたの」 「何、火が南にともっていたと。きよ、それは、 ほ…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 80 第七章 新しい出発 10 「明神さま。今、きよを助けました。しかし、 意識がもどりません。どうしたらよいでしょ うか」 「きよを、わしのやしきへ運んでくれ」 「はい、わかりました」 手長と足長は、明神さまのやしきへ…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 79 第七章 新しい出発 9 どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。 手長の手に、何かひっかかりました。 「あなた。何かひっかかったわ」 二人は、力をあわせてひきあげました。 きよでした。 きよは、水を飲んでいるのか、ぐ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 78 第七章 新しい出発 8 「手長、もうやめよう。こんなことをしていると、 わしらまでうずにまきこまれてしまう」 「あなた。きよのために、もう少しがんばりまし ょう」 「じゃあ、今度はあちら側をさがそう」 「あなた。う…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 77 第七章 新しい出発 7 足長は手長を背負い、ごぉーと音をたてている うずのまわりを、ゆっくり歩きました。 「明神さま。これからうずのまわりを歩きます。 どうかわしらをしっかりお守りください」 手長と足長は、心の中…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 76 第七章 新しい出発 6 「あなた、何をいっているの。私たちが、きよ を助けるんでしょ。足長、私を背負って、淵の まわりをゆっくり歩いてちょうだい」 「手長。そんなことをしたら、わしらもうずに まきこまれてしまうぞ…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 75 第七章 新しい出発 5 「わかりました。すぐ行きます」 「手長、足長。きよのこと、たのんだぞ」 「はい、承知しました」 手長と足長は、いそいで小坂観音沖の淵へ向か いました。 淵へつくと、淵は大きなうずをまいていま…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 74 第七章 新しい出発 4 この世で、次郎さんと会うことができて、私は 幸せだった。 次郎さん、ありがとう。 とうちゃん、かあちゃん。大切に育ててくれて ありがとう。 私、二人のこどもに生まれて幸せだった。 生まれ変わ…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 73 第七章 新しい出発 3 五分後。 「やっぱり変だ。泳ぐ方向を変えなくては」 そう思った時、目の前に大きなうずがあらわれ ました。 「あっ、うずだ」 きよは、大きなうずにまきまれてしまいました。 もがけばもがくほど、…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 72 第七章 新しい出発 2 しばらくすると、西山にぽっと小さな火が ともりました。 「あっ、次郎さんだ。今日も火をたいてく れたのね。ありがとう」 きよは、西山にともった小さな火をみてほ っとしました。 しかし、何か変…