童話

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 20 やっと、獅子頭が彫りあがりました。 「獅子よ。ようやく彫りあがったぞ。おまえ は、わしが初めて彫った大切な獅子頭じゃ。 さあ、獅子よ。早くでておいで」 男は、大声で獅子をよびました。 そして、彫りあがっ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 19 苦労したのは、上顎と下顎の部分。 いくら彫っても、うまくいきません。 「あごを彫るのは、むずかしいのう」 男は、あごの部分を何度も彫りなおしました。 上顎と下顎をきりわけることも、難しい作業 でした。 そ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 18 「獅子よ。やっと荒彫りが終わったぞ。早く目を さましておくれ」 男は、いとおしそうに何度も獅子頭をなでました。 荒彫りが終わると、目・まゆげ・鼻・あごなどを、 一つ一つていねいに彫っていきました。 「ほ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 17 のみがきれなくなると、滝へ行き滝に打たれ ます。 そして、滝にかかる虹をみながら、男は一心 にのみを研ぎました。 のみを研いでいると、ざわざわしていた心が 消え、心が静かになりました。 男は、寝る間もおし…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 16 「不動明王さま。これから、獅子頭の荒彫り を始めます。木の中から、元気な獅子があら われますように」 男は、そう祈りました。 そして、滝にうたれ身を清めました。 小屋へもどった男は、木の前で何度も深呼吸 …

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 15 「獅子よ。早く目をさましておくれ。そして、 外へでておいで。待っているぞ」 男は、木にむかって話しかけました。 まず、獅子頭の大きさを決め、ていねいに木 を切りました。 そして、下絵が描けるように、表面…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 14 「よーし、りっぱな獅子頭をつくるぞ」 男は、改めて心にちかいました。 真っ赤な大きな顔。 黄金色の髪。 黒々した太いまゆ。 かっとみ開いた大きな目。 獅子鼻とよばれるまあるい大きな鼻。 こどもを飲みこんで…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 13 「この寺の獅子舞は、屋台を使っている。大き な木の枠に車輪をつけ、竹で骨組みをつくる。 そして、その上に幌をかけるのじゃ。屋台の長 さは、約七メートル。幅は、二メートル。高さ は、二メートルくらいあるか…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 12 「瑠璃寺は、何百年も続いている由緒ある寺。 その寺にふさわしい獅子頭を、わしは彫ること ができるだろうか」 男は、不安でした。 「わしは、若い時から、いくつもの仏像やお面 を彫ってきた。だから、獅子頭だ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 11 木がみつかると、のみやかんななど、木を彫る ための道具の手入れを始めました。 仕事を始める前には、まず滝へ行き、不動明王 にお参りします。 「わしは、獅子頭をみたこどもが、びっくりし て泣きだすような、…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 10 男は木地屋へ行き、桐やイチョウ・栃・楠など の木をみせてもらいました。 でも、気にいった木はみつかりません。 二週間後。 やっと、気にいった木がみつかりました。 それは、大きな桐の木でした。 「この木の中…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 9 晴れた日には、滝一面に太陽があたり、滝から 落ちる水しぶきに、美しい虹がかかります。 男は滝の虹をみた時、「なんて美しい虹だろう」 と思いました。 虹をみていると、汚れてしまった心が、きれい に洗われるよ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 8 男は、獅子頭を彫るために、不動滝のそば に小さな小屋を建てました。 雨と風がふせげるだけのあばらやでした。 不動滝は、瑠璃寺から一里ほどはなれた山 の中にあります。 滝のそばには、岩に刻まれた不動明王の座 …

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 7 「そう、生きているようにみえる獅子の頭。 獅子頭をみたこどもが、驚いてわぁーと泣き だすような、そんな獅子の頭を作ってほしい」 「生きているようにみえる獅子の頭ですか。 和尚さま、難しい注文ですな」 「無…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 6 「和尚さま。祭は、いつですか」 「祭は、一昨日すんだばかりじゃ。例年は、 満開の桜の下で、獅子舞がおこなわれるの だが、今年は花が咲くのが遅くてのぅ」 「そうですか。獅子舞をみたいと思ったの に、残念です…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 5 「この寺では、春の祭に、獅子舞がおこなわ れる。五穀の豊穣や、人々の無事を祈る獅子 舞なのじゃ」 「和尚さま。こんないなかで、獅子舞なんて 珍しいですな」 「そうじゃのぅ。瑠璃寺の獅子舞は、滋賀の 国・日吉…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 4 すると、 「せっかくじゃが、この寺には、平安時代 につくられた薬師瑠璃光如来など、すばら しい仏さまがたくさんおられる。 だから、 仏像はもういらない」 和尚は、そういってことわりました。 「和尚さま。仏像…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 3 「薬師如来が?」 「そう、まばゆいばかりの薬師如来が、木々 の間からすぅーとあらわれたそうじゃ。その 神々しい姿をみた観誉僧都は、いたく感激さ れてのぅ。それで、この市田に瑠璃寺を建て たといわれている」 …

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 2 「満開の桜を、ぜひみたいものですな。和尚 さま。源頼朝公といえば、鎌倉時代の人。こ の寺は、ずいぶん古いのですね」 「瑠璃寺は、天永三年(1112年)、比叡 山竹林院の観誉僧都(かんよそうず)によっ て創…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 1 信州の伊那谷に、何百年も続いている天台宗の古 い寺がありました。 寺の名は、瑠璃寺。 獅子舞と枝垂れ桜で有名な寺でした。 寺からは、南アルプスの山々が美しくみえます。 桜の花が何輪か咲き始めた春のある日。 …

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 23 「わん、わん、わん」 大きな石のまわりを、タケルとチハヤがうれ しそうに走りまわっています。 普門寺は、その後、「立石寺」とよばれるよう になりました。 そして、村の人々は、大きな石のあるあたり…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 22 すると、 「和尚さま。た、大変です」 こぞうが、とびこんできました。 「そうぞうしい。なにごとじゃ」 「和尚さま。裏の畑に、大きな石がころがっ ています」 「何? 石が。どんな石じゃ」 「三メートル…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 21 「タケル」 「チハヤ」 和尚は、二匹の犬をしっかりだきました。 タケルとチハヤは、和尚の顔をぺろぺろなめて います。 「タケル、チハヤ。元にもどれてよかったのぅ」 和尚の目から、涙があふれました。…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 20 「そうか。三郎さ、ありがたくいただくぞ。本 尊の観音さまもさぞ喜んでおられるだろう」 三郎は、全財産を寺に寄進しました。 そして、寺の手伝いをしながら暮らしました。 和尚は、石になってしまった愛…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 19 「二匹の犬は、家族の一員だったから、さ みしいのぅ。元にもどれるといいのじゃが」 和尚がさみしそうにいいました。 「三郎さ。鹿狩りにはいかないのかい」 「はい、和尚さま。あれいらい、わしは鹿 狩…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 18 大きな杉の木の根元に、犬の形をした二つ の石がころがっていました。 「タケル、チハヤ。なぜ石になってしまっ たのじゃ」 和尚は、石になってしまったタケルとチハ ヤを、何度もなでました。 そして、二…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 17 「観音さま。身の危険を感じたとはいえ、わ しは観音さまの化身である鹿に矢をむけてし まいました。どうか、わしをお許しください。 今まで、わしは、たくさんの鹿を殺しました。 なんて罪深いことをして…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 16 鹿は、神様や仏さまのおつかいをしている 動物じゃ。三郎さは、鹿狩りの名人。観音 さまは、おつかいをしてくれる鹿がいなく なってしまうのではないかと、心配された のかもしれんぞ。実は、わしも、三郎…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 15 「和尚さま。わしは、おそれおおくも観音さ まに矢をむけてしまいました。わしは、どう したらいいんじゃ」 三郎は、観音さまの化身である鹿に矢をむけ たことを、心からくやみました。 すると、和尚がい…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 14 「消えている?」 「ほら、あそこ」 みると、小さな観音さまが一つ消えています。 「ほんとだ」 二人は、びっくりしました。 「三郎さ。黄金色の鹿は、小さい観音さまの 化身だったのかもしれないぞ」 「…