童話

朝顔のエスカレーター

[童話]朝顔のエスカレーター 朝顔のエスカレーター 5 よく見ると、黄金色の鳥が一羽、柱時計の上にとまっ ています。 見たことがない、黄金色の美しい鳥でした。 「かなさん、私は遠い国からあなたのおとうさんを迎え にやってきました。これからおとうさん…

朝顔のエスカレーター

[童話]朝顔のエスカレーター 朝顔のエスカレーター 4 沼へおにやんまや銀やんまを、とりにいったこと。 庭できあげはや黒あげはをとったことが、まるで昨日 のことのように、なつかしく思い出されました。 「やさしいとうちゃんだった。私はとうちゃんが大…

朝顔のエスカレーター

[童話]朝顔のエスカレーター 朝顔のエスカレーター 3 「とうちゃん、とうちゃん。目をあけて。ねえ、とうちゃ ん、おきて・・・」 かなは、おとうさんの体にしがみつき、体をゆすりま した。 さっきまで元気でいたおとうさんが、急になくなって しまうなん…

朝顔のエスカレーター

[童話]朝顔のエスカレーター 朝顔のエスカレーター 2 「この鈴はね、鎌倉の和尚さんからいただいた鈴だ よ。この春、丘の上の桜を見に行った時、小桜姫の 話をしてあげたね。おぼえているかな? この鈴は、 小桜姫が大切にしていた鈴の一つだよ。小桜姫は …

朝顔のエスカレーター

[童話]朝顔のエスカレーター 朝顔のエスカレーター 1 残暑の厳しい九月五日の朝。 大好きなおとうさんが、心臓病で急になくなってしま いました。 しんきんこうそくでした。 「かな。おじいちゃんとおばあちゃんにかわいがって もらったことを、いつまでも…

お月さまの耳かざり

[童話]お月さまの耳かざり お月さまの耳かざり 8 その夜。 かなは、お月さまをみました。 お月さまの顔は、昨夜よりふっくらしていました。 「お月さま。お月さまからいただいた耳かざりのおか げで、かあちゃんは少し元気になりました。ありがと うござい…

お月さまの耳かざり

[童話]お月さまの耳かざり お月さまの耳かざり 7 「そうだ。この星の耳かざりを、かあちゃんにあげよう。そうすれば、かあちゃんの病気がよくなるかもし れない」 かなは、おかあさんの耳に、耳かざりをつけてあげ ました。 すると、おかあさんのほおがほん…

お月さまの耳かざり

[童話]お月さまの耳かざり お月さまの耳かざり 6 「かあちゃん。大変、大変」 かなは、病気でねているおかあさんの所へ、とんで 行きました。 「かな、すてきな耳かざりね。どなたにいただいたの」 「散歩の途中で、お月さまから耳かざりをもらったの」 「…

お月さまの耳かざり

[童話]お月さまの耳かざり お月さまの耳かざり 5 「誰だろう」 あたりをみまわしましたが、誰もいません。 空をみあげると、お月さまがにっこり笑っていました。 「あっ」 お月さまの耳についていた星が、かなの耳をめがけ て、するするっとおりてきました…

お月さまの耳かざり

[童話]お月さまの耳かざり お月さまの耳かざり 4 「お月さまと星が、衝突するのではないかしら」 かなは、心配になりました。 「あっ、大変」 大声でさけんだ時、お月さまの耳のあたりに、金星 がぴたっとつきました。 「わぁ、お月さまの耳かざりみたい。…

お月さまの耳かざり

[童話]お月さまの耳かざり お月さまの耳かざり 3 「じゃんけんぽん、あいこでしょ」 どこからか、元気な男の子たちの声が聞こえてきます。 すっかり暗くなった道を、かなとりゅうは、家にむかっ ていそぎました。 長い坂道をのぼり、平らな道にでた時、空に…

お月さまの耳かざり

[童話]お月さまの耳かざり お月さまの耳かざり 2 細い道の両側には、かりとったばかりの黄金色の稲 が、はざにかけてありました。 はざのまわりを、赤とんぼが飛んでいます。 雲ひとつない真っ青な西の空が、だんだんにうすい クリーム色に変わってきました…

お月さまの耳かざり

[童話]お月さまの耳かざり お月さまの耳かざり 1 かなは、お月さまが大好き。 よちよち歩きの頃から、小さな手をあわせ、「あん」と、 おじぎしていたそうです。 秋のある日の夕方。 かなは、柴犬のりゅうと、散歩に行きました。 りゅうは、散歩が大好き。 …

あげはちょうになって

[童話]あげはちょうになって あげはちょうになって 8 「かなちゃん。いつもぼくのことを思い出してくれて、 ありがとう。ぼくのことを思い出してくれるのは、かな ちゃんだけだ。ぼくはね、夏になると、あげはちょう になって、かなちゃんの庭に遊びにきて…

あげはちょうになって

[童話]あげはちょうになって あげはちょうになって 7 あげはちょうは、ひらひら舞いながら、二人の後をつ いてきた。 「ひろが、あげはちょうになったのだわ」 かなは、そう思った。 あげはちょうは、家までついてきた。 そして、いろいろな花が咲いている…

あげはちょうになって

[童話]あげはちょうになって あげはちょうになって 6 「ご先祖さま、広々したお墓ができて良かったね。気 持がいいでしょ」 かなとおじいさんは、ひとつひとつの墓に、線香をそ なえ水をかけた。 「ご先祖さま。さあ、一緒に家に帰りましょうね」 かながそ…

あげはちょうになって

[童話]あげはちょうになって あげはちょうになって 5 「みーん、みーん」 裏の林で、蝉が鳴いている。 太陽が、かっーと照りつけているが、墓の中は涼しか った。 三十余りの古い墓石の中で、できあがったばかりの ひろの墓が目立ってみえた。 「やっと、ひ…

あげはちょうになって

[童話]あげはちょうになって あげはちょうになって 4 おじいさんは、しょうぶの葉で、しきものを作った。 そして、畑でとれたとうもろこし・とまと・なす・きゅうり などを、棚に供えた。 昨日買ってきたみかんやぶどうも供えた。 二人は、先祖が帰ってくる…

あげはちょうになって

[童話]あげはちょうになって あげはちょうになって 3 この春。 かなは、小学校へ入学した。 おじいさんは元気だが、なぜか肩こりがひどい。 「じいちゃん。そこへすわって」 毎晩、かなはおじいさんの肩をたたいてあげた。 かなは、おじいさん思いのやさし…

あげはちょうになって

[童話]あげはちょうになって あげはちょうになって 2 ひろは、この家の英雄だった。 しかし、なぜか、ひろの墓はない。 かなは墓参りをするたびに、三才でなくなったひろ のことが気になっていた。 六十年たった今では、ひろのことを知っている人も、 ひろ…

あげはちょうになって

[童話]あげはちょうになって あげはちょうになって 1 夏のある日。 ひろは、三才でなくなった。 何か悪い物を食べたらしい。 ひろは、男の子。 やさしい利口なこどもだったという 一ヵ月後。 かなのおじいさんが生まれた。 まるでひろの生まれ変わりのよう…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「チャンスだ!! さあ、にげよう」 5 そうさけんだけれど、その男の人には通じなかったみ たいだ。 そうこうしているうちに、とうとうあーちゃんにつかまっ てしまった。 「もうしわけありません。この犬、何かしま…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「チャンスだ!! さあ、にげよう」 4 「りゅう。どこへ行くの!!ボールを拾ってきなさい」 あーちゃんが大きな声でどなっている。 「りゅう。まちなさい。りゅう、まてー」 そういいながら、あーちゃんがすごいいき…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「チャンスだ!! さあ、にげよう」 3 あーちゃんがボールを投げる。 それをぼくが拾ってくる。 そして、ごほうびにチーズとかまぼこをもらう。 そんなことを、20回位くりかえした。 ぼくは、だんだん疲れてきた。 …

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「チャンスだ!! さあ、にげよう」 2 「りゅう、どこかへ行ってはだめよ。ちゃんとあーち ゃんの所にもどってくるのだよ。りゅう、わかった?」 「うん、わかった。ちゃんともどってくるよ。だって、 ぼく、チーズや…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「チャンスだ!! さあ、にげよう」 1 ぼくが幼かった頃の話だ。 生後七ヶ月か、八ヶ月位の頃かな。 稲が30センチ位になっていたから、六月の終り頃だ ったのかな。 その日も、ぼくはあーちゃんと散歩に行った。 そ…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ハプニング? あーちゃんの指をがぶり・・・」 13 「これからは、りゅうの前で物をとる時、気をつけろ よ。またやられるぞ」 「そうね。これからは気をつけるわ」 あーちゃんとこうちゃんの会話が、台所から聞こえ…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ハプニング? あーちゃんの指をがぶり・・・」 12 「りゅうって、本当にしつこい犬ね。りゅうがあんなにし つこい犬だとは思わなかった・・・。 耳をひっぱっても、しっぽをひっぱっても、かんでる指 をはなしてく…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ハプニング? あーちゃんの指をがぶり・・・」 11 「何いっているの。みてもいないくせに・・・。いきなり 指にかみついたのよ」 あーちゃんはまだ指が痛いらしく、きげんが悪い。 「またりゅうのボールでもとりあ…

愛犬りゅう「ばいばい、またね」

[童話]愛犬りゅう「ばいばい、またね」 「ハプニング? あーちゃんの指をがぶり・・・」 10 「あーちゃん、ごめんね。痛かったでしょ」 ぼくは何度も心の中であーちゃんにあやまった。 ハプニングだといえ、なんてひどいことをしてしまった のだろう・・・…