童話

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 7 「そう、生きているようにみえる獅子の頭。 獅子頭をみたこどもが、驚いてわぁーと泣き だすような、そんな獅子の頭を作ってほしい」 「生きているようにみえる獅子の頭ですか。 和尚さま、難しい注文ですな」 「無…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 6 「和尚さま。祭は、いつですか」 「祭は、一昨日すんだばかりじゃ。例年は、 満開の桜の下で、獅子舞がおこなわれるの だが、今年は花が咲くのが遅くてのぅ」 「そうですか。獅子舞をみたいと思ったの に、残念です…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 5 「この寺では、春の祭に、獅子舞がおこなわ れる。五穀の豊穣や、人々の無事を祈る獅子 舞なのじゃ」 「和尚さま。こんないなかで、獅子舞なんて 珍しいですな」 「そうじゃのぅ。瑠璃寺の獅子舞は、滋賀の 国・日吉…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 4 すると、 「せっかくじゃが、この寺には、平安時代 につくられた薬師瑠璃光如来など、すばら しい仏さまがたくさんおられる。 だから、 仏像はもういらない」 和尚は、そういってことわりました。 「和尚さま。仏像…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 3 「薬師如来が?」 「そう、まばゆいばかりの薬師如来が、木々 の間からすぅーとあらわれたそうじゃ。その 神々しい姿をみた観誉僧都は、いたく感激さ れてのぅ。それで、この市田に瑠璃寺を建て たといわれている」 …

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 2 「満開の桜を、ぜひみたいものですな。和尚 さま。源頼朝公といえば、鎌倉時代の人。こ の寺は、ずいぶん古いのですね」 「瑠璃寺は、天永三年(1112年)、比叡 山竹林院の観誉僧都(かんよそうず)によっ て創…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 1 信州の伊那谷に、何百年も続いている天台宗の古 い寺がありました。 寺の名は、瑠璃寺。 獅子舞と枝垂れ桜で有名な寺でした。 寺からは、南アルプスの山々が美しくみえます。 桜の花が何輪か咲き始めた春のある日。 …

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 23 「わん、わん、わん」 大きな石のまわりを、タケルとチハヤがうれ しそうに走りまわっています。 普門寺は、その後、「立石寺」とよばれるよう になりました。 そして、村の人々は、大きな石のあるあたり…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 22 すると、 「和尚さま。た、大変です」 こぞうが、とびこんできました。 「そうぞうしい。なにごとじゃ」 「和尚さま。裏の畑に、大きな石がころがっ ています」 「何? 石が。どんな石じゃ」 「三メートル…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 21 「タケル」 「チハヤ」 和尚は、二匹の犬をしっかりだきました。 タケルとチハヤは、和尚の顔をぺろぺろなめて います。 「タケル、チハヤ。元にもどれてよかったのぅ」 和尚の目から、涙があふれました。…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 20 「そうか。三郎さ、ありがたくいただくぞ。本 尊の観音さまもさぞ喜んでおられるだろう」 三郎は、全財産を寺に寄進しました。 そして、寺の手伝いをしながら暮らしました。 和尚は、石になってしまった愛…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 19 「二匹の犬は、家族の一員だったから、さ みしいのぅ。元にもどれるといいのじゃが」 和尚がさみしそうにいいました。 「三郎さ。鹿狩りにはいかないのかい」 「はい、和尚さま。あれいらい、わしは鹿 狩…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 18 大きな杉の木の根元に、犬の形をした二つ の石がころがっていました。 「タケル、チハヤ。なぜ石になってしまっ たのじゃ」 和尚は、石になってしまったタケルとチハ ヤを、何度もなでました。 そして、二…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 17 「観音さま。身の危険を感じたとはいえ、わ しは観音さまの化身である鹿に矢をむけてし まいました。どうか、わしをお許しください。 今まで、わしは、たくさんの鹿を殺しました。 なんて罪深いことをして…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 16 鹿は、神様や仏さまのおつかいをしている 動物じゃ。三郎さは、鹿狩りの名人。観音 さまは、おつかいをしてくれる鹿がいなく なってしまうのではないかと、心配された のかもしれんぞ。実は、わしも、三郎…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 15 「和尚さま。わしは、おそれおおくも観音さ まに矢をむけてしまいました。わしは、どう したらいいんじゃ」 三郎は、観音さまの化身である鹿に矢をむけ たことを、心からくやみました。 すると、和尚がい…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 14 「消えている?」 「ほら、あそこ」 みると、小さな観音さまが一つ消えています。 「ほんとだ」 二人は、びっくりしました。 「三郎さ。黄金色の鹿は、小さい観音さまの 化身だったのかもしれないぞ」 「…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 13 「タケルとチハヤは、石になっていました」 「タケルとチハヤが、石に? 三郎さ、どう いうことじゃ」 愛犬が石になってしまったと聞き、和尚はお ろおろしています。 「わしにもさっぱりわかりません。和…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 12 「何? いとめた鹿が、消えてしまったと。 三郎さ、夢でもみていたのではないのか」 和尚がいいました。 「いいえ、和尚さま。夢なんかみていません」 三郎が、きっぱりいいました。 「そうか」 「わしは…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 11 「何? 黄金色の鹿だと。この世に、そんな 鹿がいるのか」 「いません。多分いないと思います。わしも、 初めてみました。その鹿は、美しい黄金色の 鹿でした。しかも、びっくりするような大き な鹿。その…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 10 三郎には、なにがなんだかわかりませんでした。 夢をみているような感じでした。 「とにかく、和尚さまに知らせなくては」 三郎は、観音さまをもって、急いで寺へ帰りま した。 「和尚さま。た、大変です…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 9 「何だろう」 近づいてみると、小さな観音さまでした。 身の丈は、二寸(六センチ)くらい。 黄金のように、ぴかっぴかっと光っています。 そして、観音さまの横には、石が二つころがっ ていました。 「なん…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 8 「黄金色の鹿は、どこへ行ってしまったのだろう」 三郎は、鹿をさがして、山の中を歩きました。 気がつくと、タケルとチハヤのなき声が聞こえま せん。 「タケル」 「チハヤ」 三郎は、大きな声で二匹の名を…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 7 「ばたんっ」 大きな音をたて、鹿がたおれました。 「黄金色の鹿をいとめたぞー」 そうさけんだ時、鹿はどこかへ姿を消してしまい ました。 あっという間のできごとでした。 「おかしいな。たしかに首に矢が…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 6 「わぁーっ。黄金色の鹿だぁ」 三郎は、びっくりして大声をあげました。 「うー、うー、うー」 「わん、わん、わん」 タケルとチハヤが、鹿のまわりでほえています。 鹿が、三郎にむかって突進してきました…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 5 二匹の犬は、なきやみません。 ますますはげしくないています。 「どうしたのじゃ。近くに何かいるのだろうか」 三郎は、あたりをみまわしました。 「がさっ」 「ごそっ」 どこかで音がしました。 すると、 …

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 4 「さあ、何かいるのかも。和尚さま。じゃあ、これ から裏山をみてくるで」 「三郎さ。たのんだぞ」 和尚は、三郎に裏山をみてくれるように頼みました。 三郎は、いそいで裏山へ行きました。 「うー、うー」 …

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 3 三郎は、鹿だけでなく、うさぎやいのししなども とっていました。 三郎の家は、田畑や山林をたくさん持っています。 村一番の金持でした。 「和尚さま。タケルとチハヤが、裏山でほえてい るが、どうかした…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 2 寺には、「タケル」「チハヤ」という、二匹の犬 がいます。 利口な犬でした。 和尚は、二匹の犬を、わが子のようにかわいがっ ています。 秋のある日。 「うー、わん、わん」 「わん、わん、わん」 タケルと…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 1 信州の伊那谷、三穂村に「立石寺」という寺があり ました。 天安元年(857年)に創建された、真言宗の古い 寺でした。 立石寺は、伊那西国三十三番札所、第一番の寺。 聖徳太子作といわれる十一面観音像…