あげはちょうになって

[童話]あげはちょうになって


あげはちょうになって 8


「かなちゃん。いつもぼくのことを思い出してくれて、
ありがとう。ぼくのことを思い出してくれるのは、かな
ちゃんだけだ。ぼくはね、夏になると、あげはちょう
になって、かなちゃんの庭に遊びにきていたんだよ」
あげはちょうは、かわいい声でつぶやくと、あっとい
う間にどこかへとんでいってしまいました。


たまのかんざしの香りが、風にのってぷーんとにお
ってきました。
なんともいえない良い香りでした。
薄暗くなった庭で、たまのかんざしの花だけが、白
くうきあがってみえました。


             おわり