あげはちょうになって

[童話]あげはちょうになって


あげはちょうになって 5


「みーん、みーん」
裏の林で、蝉が鳴いている。
太陽が、かっーと照りつけているが、墓の中は涼しか
った。
三十余りの古い墓石の中で、できあがったばかりの
ひろの墓が目立ってみえた。


「やっと、ひろのお家ができたね。ひろ、良かったね」
かなは、ひろに話しかけた。
そして、花と線香をそなえた。
「かなちゃん、ありがとう。ぼく、お家ができるのを、ず
っと待っていたんだよ」
どこからか、ひろの声が聞こえてきた。


          つづく