火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 57


第六章 湖を泳ぐ娘 5


「無事に、湖をわたり終えますように」と祈り
ながら。


「次郎さん、こんばんは」
「きよちゃん。今夜は、ずいぶん早かったね。
どうしたの」
「私、湖を泳いできたの」
「えっ、湖を?」
次郎は、驚いて聞きました。


みると、きよの髪から、しずくがぽたぽたとた
れています。
「私、一分でも早く、次郎さんに会いたかった
から、湖を泳いできたの」
「きよちゃんが泳ぎが達者だということは、お
らも知っている。でも、夜中に湖を泳ぐなんて
危険だ。深みにはまって、おぼれたらどうする
の。死んでしまうよ。きよちゃん、むちゃなこ
とはしないでね」
次郎が心配していいました。


          つづく