赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


赤い夕顔の花 38


「だいじょうぶです、奥がたさま。奥がたさまが、着
古した野良着を着ているなんて、誰も思いません
から。さあ、先を急ぎましょう」
お万たちは、下条の兵士たちにみつからないよう
に、足早に歩いて行きました。


「何、今、百姓の一家が通ったと。それは、奥がた
と若君じゃ。すぐ後を追え」
遠くで、兵士のどなる声が聞こえました。
「奥がたさま。追手につかまらないように、早く逃げ
ましょう」
家臣が、お万をせかしました。
「奥がたさま。だいじょうぶですか」
「だいじょうぶよ。追手が近くにせまってきたら、私
にかまわず逃げてくださいね」


          つづく