井戸で鳴く黄金色のにわとり


 井戸で鳴く黄金色のにわとり21


「さあ、城を脱出するぞ。みんな
で故郷の甲斐にもどるのじゃ」
そうさけぶと、信廉はまだ火がつ
いていない場所へ、みずから火を
つけました。



暗闇の中で、城がめらめらと燃え
ています。
姫もにわとりをだき、おつきの人
と一緒に城をぬけだしました。



「武田が、城をぬけだしたぞー。
後をおえー」
信忠の声で、兵士たちが、武田の
人たちの後を追いました。



「姫さま、さあ早く。
だいじょうぶですか」
「私は、だいじょうぶ。みなさんは、
私にかまわず逃げて。
一人でも多く助かってほしいの。
今までいろいろお世話になりました。
ありがとう」
姫は、おつきの人たちに、お礼をい
いました。


           つづく



   昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100130#p1



   初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100111#p1



「井戸で鳴く黄金色のにわとり」は、
信州の伊那谷にあった「大島城」に
伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いた物語。