井戸で鳴く黄金色のにわとり


井戸で鳴く黄金色のにわとり 9


天正十年(1582年)二月。
大島城に、戦の知らせが届きま
した。
織田軍が、伊那谷へせめてくると。



「織田というと、信長か?」
「いや、長男の信忠じゃ」
「信忠か・・・」
「信忠といえば、信玄さまの娘・
松姫さまの婚約者だった人。婚
約者の父の城を攻めてこなくて
はならない信忠の気持は、複雑
でしょうな」



「戦国の世でなかったら、松姫
と信忠はすてきな夫婦になって
いただろうに。むごいことじゃのぅ」
「そうですな」


         つづく