死の棘日記


作家の島尾敏雄さんが逝って19年。
今年四月、新潮社から「死の棘日記」が刊行
された。 夫の女性問題で、神経に異常をき
たした妻との極限の愛を描いた小説「死の棘」
の元になった日記である。




青年将校だった島尾敏雄さんは、奄美群島
計呂麻島で、琉球南山王の血をひく旧家の娘・
大平ミホさんと運命的なであいをし、結婚する。




「死の棘日記」は、昭和29年9月末から、
一年あまりにわたる夫婦の壮絶な葛藤を書い
た日記。




白石明彦さんのインタビューをうけて、85
才になった島尾ミホさんはこう語ったという。




あの前の日のことです。 朝まで駅で待ちま
したが、島尾は帰らず、私は家に戻りました。
夫の部屋に入ると日記が開けてありまして、
13文字が目にとまったのです。




島尾の気持がほかの人に移っている・・・・
その瞬間、がたがた震え、体中が熱くなりま
した。 人を疑うことを知りませんでしたから。
人間は極限状況だと、ワオーッというライオン
がほえるような声がでるのですね。




部屋中を駆け回り、畳をかきむしり、気が変に
なりました。 その13文字は誰にも申し上げ
られません・・・と。




島尾ミホさんは、田村敏子賞作家・歌人
著書に「海辺の生と死」「祭り裏」「ヤポネシ
アの海辺から」などがある。




  死の棘日記



「死の棘」日記

「死の棘」日記




5月22日付の朝日新聞「文化芸能欄」風韻 
「鳥尾が遺した愛妻日記」に、島尾ミホさん
のインタビューがのっています。