童話「笛の音よ、永久にひびけ」8
「楓の木では、駄目なのかもしれない。あきらめる
よりしかたがないのか」
若者は、弱気になりました。
「楓のためにも、私だけでもがんばってみよう」
若者は寝る間もおしみ、毎日笛を作り続けました。
「楓よ、もっと長生きしたかっただろうに、人間の
勝手で切りたおしてしまって、ごめんね」
若者は笛を作りながら、楓に心からわびました。
半年がすぎました。
ある日、やっと気にいった音色のする笛ができました。
「やっと、清らかな音色のする笛ができたぞ!」
若者は、とびあがってよろこびました。
一ヶ月後。
若者は、楓の木が立っていた丘の上で、コンサートを
開きました。協力してくれた村の人々や、楓の木が大
好きだったこどもたちのために、若者は楓の笛でいろ
いろな曲を演奏しました。
二百年もの間、村の人々を守ってくれた楓の木の精が、
その笛の中に宿っているような、清らかな音色でした。
つづく
このつづきは、「ライオンめざめる」の本ができた時、
公立図書館などで読んでいただきたいと思います。
童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、みほようこの四
冊目の童話集・「ライオンめざめる」に収録され
ます。
「ライオンめざめる」は、今月末(九月末)に、
http://www.choeisha.com/
から、発行される予定です。
収録される童話
・ ライオンめざめる
・ 笛の音よ、永久にひびけ
・ かきつばたになった少女