白駒の池


     白駒の池9
  

「きよ。どこへ行くんだい?」
「霧ケ峰高原よ」
「ゆうすげの花は、夕暮れでないと咲かないの
だよ」
「知っているわ。とうちゃん」
「夕方遅く、しかも清太と二人っきりで、でか
けるのかい?」
「そうよ。清太さんと二人で行くの。とうちゃん、
みに行ってはだめ?」



「きよは、嫁入り前の大事な体なのだよ。今、縁
談の話もいくつかあるしね」
「とうちゃん。清太さんは、誠実な人よ。だから、
何も心配することはないわ」
きよは、きっぱりいいました。
「とうちゃんも、そう思う。清太は、ほんとうにま
じめないい青年だ。でも、長者の娘が、夕方遅
く使用人とでかけて行ったなんていわれても困るし」
長者はまよっているようでした。



「ねえ、とうちゃん。ゆうすげの花をみに行っても
いいでしょ?」
きよは、ふたたび長者に聞きました。
「まあ・・・清太なら・・・心配ないだろう。きよ。
気をつけて、行っておいで。ゆうすげの花は、レモ
ン色の美しい花だよ。二人でゆっくり花をみておいで」



長者の許可をもらった二人は、明るいうちに霧ケ峰高
原へむかいました。もちろん、白駒も一緒です。


つづく