きよと清太と、そして白駒


    きよと清太と、そして白駒4


「何いっているの、清太さん。たしかに、私は長
者の娘よ。みんなから、長者のおじょうさまって、
いわれているわ。でも、私は、おじょうさまとい
うことばが大きらい。きよってよんでほしいの」



「それはそうだけれど・・・」
清太は、ためらっています。
「私は、清太さんのことを、うちの使用人だなん
て思ったことは、一度もないわ。私、清太さんの
こと、ほんとの兄ちゃんだと思っている」



「おじょうさまの気持はうれしいけれど、おらは
この家の使用人だから・・・ね」
貧しい家に育った清太は、さみしそうにいいました。
「おじょうさま。おらも、おじょうさまのことを、
ほんとの妹だと思っているよ。いや、それ以上かな」
清太は、心の中でそっとつぶやくのでした。


   つづく



「きよと清太と、そして白駒」は、信州の佐久地方に伝
わっている「白駒の池」の話をヒントに、みほようこ
書いた物語。

  
       主な登場人物


    きよ   長者の一人娘

    清太   長者の家で働いている少年

    白駒   長者の家の馬