福寿草になった少女


  福寿草になった少女12


どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。
あたりがなんとなくうす暗くなってきました。
福がでかけた時は、からりと晴れていたのに、
今にも雪が降ってきそうでした。



しばらくすると、雪がちらちらと舞いはじめ
ました。
「早く家に帰らなくては。とうちゃんとかあ
ちゃんが、心配しているだろう」
福は、山をおりようと思いました。
しかし、一日じゅう山の中を歩き回ったせい
か、もう一歩も歩けません。



福は、枯葉の上に腰をおろしました。
そして、いつの間にか、うとうととねむって
しまったのです。
福の体の上に、少しずつ少しずつ雪が積もっ
ていきました。



「福や、福や。おきるのじゃ。こんな所でね
ていると、こごえしんでしまうぞ」
うすれゆく意識の中で、福はその声を聞きま
した。
その声は、どこかで聞いたことがあるような、
とてもなつかしい声でした。


             つづく
 


童話「福寿草になった少女」は、守屋山の
明神様にまつわる、福寿草と少女の話。
信州諏訪の「風の神様」から聞いたお話。



童話「福寿草になった少女」は、みほようこ
の二冊目の童話集「竜神になった三郎」に収
録されています。








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