竜神になった三郎11
「太郎兄さーん、助けてぇ」
「次郎兄さーん、助けてくれー」
三郎は、ひっしで兄たちに助けを求めまし
た。
しかし・・・。
兄たちはさっさと舟をこぎ、三郎をみすて
ていってしまいます。
「なぜだ」
あんなにかわいがってくれた兄たちが、な
ぜこんなひどいことをするのか、三郎には
わかりませんでした。
三郎の頭の中には、兄たちとの楽しかった
思い出が、次々と浮かびました。
山でわらびやたらの芽、あけびや栗を取っ
たことが、昨日のことのようになつかしく
思い出されました。
「おっかあ、助けてくれー。おっかあ、お
れはまだ死にたくなーい」
「お願いだー。誰か助けてくれー」
三郎は、ひっしでさけびました。
しかし、広い湖には誰もいません。
つづく
「竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。
「竜神になった三郎」は、2004年4月、
信州の「諏訪大社」の御柱祭にあわせ、
「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。