竜神になった三郎


   竜神になった三郎12


泳ぎのうまい三郎でしたが、落ちた所が強
くうずをまいている所だったのでたまりま
せん。
もがけばもがくほど、三郎の体は、ずるず
るーと、うずの中にすいこまれてしまうの
です。
ひっしにもがいていた三郎も、いつしか力
つき、深い湖の底へ沈んでしまいました。



どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。
「気分はどうじゃ。気がついたかな」
その声で、三郎ははっと目がさめました。
三郎は、広い部屋の中で寝ていました。
そばには、長いひげのおじいさんが立って
います。



「わしは地の国の神じゃ。本当にひどい目
にあったのぅ。しかし、おまえはあんなひ
どい目にあっても、兄たちを少しもにくん
でおらぬ。なぜじゃ。
なぜお前は、兄たちをにくまないのじゃ」
神様は、三郎にたずねました。


          つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。








竜神になった三郎」は、2004年4月、
信州の「諏訪大社」の御柱祭にあわせ、
「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。