竜神になった三郎


  竜神になった三郎15


一方、三郎の妻は、いくら待っても三郎が
帰ってきません。
「兄さん、三郎さんがまだ帰ってこないの
ですが、どうしたのでしょうか」
心配になった妻は、兄たちに聞きました。



「三郎はな、町で用たしをしてくるといっ
とった。だから、もうすぐ帰ってくるじゃ
ろ。心配ないさ」
兄たちは、平然としていいました。
しかし、三郎は帰ってきません。



一日たち、二日たち、三日たっても、三郎
は帰ってきませんでした。
「三郎さんはどうしたのかしら」
三郎のことが心配で、妻はいてもたっても
いられません。
妻は諏訪湖へ行き、朝から晩まで三郎を探
しました。
でも、三郎はみつかりませんでした。 



十年が過ぎました。   
ある日、三郎は神様にお願いしました。
「ひとめで良いから、妻にあわせていただ
きたい」と。


            つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。








竜神になった三郎」は、2004年4月、
信州の「諏訪大社」の御柱祭にあわせ、
「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。