竜神になった三郎


竜神になった三郎17


三郎は、妻に会いたい一心で、休むことな
く毎日歩き続けました。
「この道をまっすぐ行けば、本当に地上へ
でることができるのだろうか」
「早くおっかあに会いたいな。おっかあは
元気でいるだろうか」
三郎は、妻のことばかり考えながら、歩き
続けました。



地の国をでてから、千日が過ぎました。
「おっ、かすかに光がみえるぞ。とうとう
村へついたぞー」
三郎は、大声でさけびました。



穴からでると、目の前には、なつかしいたて
しな山がみえました。
「やっと村へ帰ってくることができた・・・」
三郎はほっとしました。



のどがかわいた三郎は、水を飲もうと、近く
の沼へ行きました。
「おや、なんだろう」
沼に写った自分の姿をみた三郎は、腰がぬけ
るほどびっくりしました。
三郎の体は、うろこのついた大きな蛇になっ
ていたのです。


        つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。








竜神になった三郎」は、2004年4月、
信州の「諏訪大社」の御柱祭にあわせ、
「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。



湖につき落とされた三郎が、地の神に助けら
れ、心のやさしさゆえに、竜神となる表題作
ほか、守屋山の明神様にまつわる、福寿草
少女の話を収録。


信州諏訪の「風の神様」から聞いた話をまと
めた第2弾。