竜神になった三郎


竜神になった三郎18


「せっかく村に戻ってくることができたのに
・・・。なぜだ。
こんな姿でおっかあに会ったら、おっかあは
びっくりして、腰をぬかしてしまうだろう。
でも・・・、おっかあにひとめ会いたい」
三郎は、ずるずるーとはって、わが家にいそ
ぎました。



やっと、なつかしいわが家につきました。
「おっかあ、帰ったぞ。おっかあ、元気でい
るか」
三郎は、大声で妻をよびました。
しかし、何の返事もありません。



それどころか、家のまわりは草だらけでした。
いつ草をかったともわからない程、家のまわ
りはあれていたのです。
「おかしいな、どうしたのだろう」
家の中へ入った三郎は、驚きました。
家の中は、くもの巣だらけでした。



「おっかあはどこへ行ってしまったのだろう」
三郎は心配になりました。
三郎は、兄たちの家へも行ってみました。
しかし蛇の姿ではどうすることもできません。


           つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。








竜神になった三郎」は、2004年4月、
信州の「諏訪大社」の御柱祭にあわせ、
「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。



湖につき落とされた三郎が、地の神に助けら
れ、心のやさしさゆえに、竜神となる表題作
ほか、守屋山の明神様にまつわる、福寿草
少女の話を収録。


信州諏訪の「風の神様」から聞いた話をまと
めた第2弾。