竜神になった三郎


竜神になった三郎20
 

きりがみねの丘に着いた時、諏訪湖のあた
りが、ぼおっと明るく光っているのがみえ
ました。
「おっかあー、三郎だー」
「おっかあ、いたら返事をしてくりょー」
三郎はひっしでさけびました。
でも、何の返事もありません。
三郎は何度も何度もさけびました。



すると・・・。
気のせいでしょうか。
「三郎さーん、三郎さーん」
妻のやさしい声が、聞こえたような気がし
ました。
「おっかあ、おっかあー。どこにいる。
いたら返事をしてくりょー」
三郎はひっしでさけびつづけました。



「ここよー。私は諏訪湖にいるわー」
妻のやさしい声が、どこからか聞こえてき
ました。
三郎はがばっと体をおこすと、諏訪湖めざ
して進みました。
気がつくと、三郎は竜になっていました。
「はぁっ、はっ」
三郎は大きなあらい息をはくと、大空にま
いあがりました。


         つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収
録されています。








竜神になった三郎」は、2004年4月、
信州の「諏訪大社」の御柱祭にあわせ、
「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。



湖につき落とされた三郎が、地の神に助けら
れ、心のやさしさゆえに、竜神となる表題作
ほか、守屋山の明神様にまつわる、福寿草
少女の話を収録。


信州諏訪の「風の神様」から聞いた話をまと
めた第2弾。