女神さまとの約束29
「私、とうちゃんに元気になってほし
かったの。女神さまと約束した時は、
とうちゃんの病気がなおることしか考
えていなかった。
だから、岩場に残るということがどう
いうことなのか、何も考えていなかっ
たの。よく考えてみると、この岩場に
残るということは、とうちゃんとはな
ればなれにくらすということなのよね」
ふくは、さみしそうにいいました。
「女神さまとの約束は、守らなくては
いけないけれど、とうちゃんはふくが
いないとさみしい」
長者も、さみしそうでした。
「私だって、とうちゃんと一緒に、家
に帰りたい。でも、女神さまに、とう
ちゃんを助けてもらったのだから、さ
みしくてもがまんしなくては・・・。
何年かたてば、家へ帰れるかもしれな
いしね」
「そうなると、いいが」
つづく
信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう伝説があります。
「女神さまとの約束」は、「白駒の池」
の伝説をヒントにして、みほようこが
書いた物語。