女神さのとの約束36
病人の食べ物は、白駒が運んでくれま
す。症状にあわせ、おかゆなどを届け
てくれました。
ふくの食べ物は、小さな赤い木の実だけ。
その木の実を、一つ口にすると、なぜ
かおなかがいっぱいになりました。
「白駒。これ、何の木の実?」
「女神さまも、毎日この木の実を食べ
ていますよ。でも、名前はしりません」
白駒も、木の実の名前を知らないよう
でした。
それから、十年がすぎました。
硫黄岳での生活は、夏は涼しく快適で
した。
夏の間は、白駒の背に乗って、硫黄岳
を散歩します。
ふくは、駒草やウルップ草などの花を
みるのを、楽しみにしていました。
でも、冬は寒さがきびしく、雪が何メ
ートルも積もります。
雪は、六月ころまでとけません。
つづく
信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう伝説があります。
「女神さまとの約束」は、「白駒の池」
の伝説をヒントにして、みほようこが
書いた物語。