火とぼし山


   火とぼし山3


「どこへ引っ越すの」
諏訪湖の西にある村。今、白鷺が飛
んでいった方向にある村だよ」
湖の西をゆびさしながら、次郎がいい
ました。



「私、次郎さんと別れるなんて、いや。
ぜったいにいや」
きよは、大好きな次郎とはなれて暮ら
す生活なんて考えられませんでした。
「おらも、きよちゃんと別れるのはつ
らい。でも、仕事だからしかたがない」
次郎は、割り切っているようでした。



「次郎さん。引越しをしても、私と会
ってくれる?」
「もちろん。きよちゃん、時々会おうね」
「どうやって会うの」
「おらは、ほとんど休みがない。
だから、夜しか会えない」
「じゃあ、私が会いに行くわ」
「えっ、きよちゃんが?」


             つづく



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」と
いう悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。