火とぼし山


    火とぼし山4


「次郎さんは、休みがないんでしょ。
だったら、私が会いにいく」
「でも・・・きよちゃんは、女の子。
暗い夜道を、何時間も歩かなくてはな
らないのだよ。
きよちゃん、夜道を一人で歩けるの?」
次郎が心配して聞きました。



「だいじょうぶ。次郎さん」
きよは、きっぱりいいました。
「大好きな次郎さんのためなら、私ど
んなことでもする」
きよは、心の中でそっとつぶやきまし
た。



「次郎さん。お願いがあるの。
私と会う日には、大きな火をたいてほ
しいの。私、その火を目印にして、次
郎さんを訪ねていくから」
「目印に火か・・・。きよちゃん。い
い考えだね。でも・・・遠くから火が
見えるかな」



「夜になれば、真っ暗だわ。だから、
見えると思う。ねぇ、次郎さん。いつ
会うの」
「十日後に、会おう」


            つづく



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」と
いう悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。