火とぼし山


   火とぼし山26


「大好きな二人が、一カ月も会えない
なんて、さみしいだろうな。なんで
会えないのじゃろ。
娘が青年に会いたいと思うのも、無
理はないのぅ」
娘の後姿をみながら、明神さまは小
声でつぶやきました。



「娘よ。青年と会えない日には、心
の中で話をしなさい。
そうすれば、さみしくないぞ。
一ヶ月なんて、あっという間じゃ。
娘よ、元気をだしなさい」
明神さまは、心の中で娘に話しかけ
ました。



その夜。
「きよ。このごろ元気がないけれど、
どうしたんだい」
おとうさんが心配して聞きました。
「とうちゃん。なんでもないわ。心
配しないで」
「きよ。大好きな次郎君と、けんか
でもしたのかい」


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。