火とぼし山


   火とぼし山41


   第六章 湖を泳ぐ娘


月のきれいな夜でした。
手長と足長は、湖で魚をとっていまし
た。手の長い手長は、魚をとるのがと
ても上手です。
今夜も、大きな鯉を、三匹もつかまえ
ました。



「ねえ、あなた。明日の朝早く、この
鯉を明神さまに届けましょう」
「そうだね。明神さまは鯉が大好きだ
から、よろこぶじゃろ。
大きな鯉だから、さしみにして食べた
ら、さぞうまいだろうな」



すると、手長がいいました。
「甘露煮の方が、おいしいわよ」と。
二人が話をしていると、
「ばしゃ、ばしゃ」
遠くの方から、音が聞こえてきました。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪湖
には、「火とぼし山」という悲しい伝
説があります。


「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。