鹿になった観音さま


   鹿になった観音さま6


「ばしっ」
鹿の首に矢がささりました。
「ばたんっ」
大きな音をたて、鹿がたおれました。
「黄金色の鹿をいとめたぞー」
そうさけんだ時、鹿はどこかへ姿を
消してしまいました。
あっという間のできごとでした。



「おかしいな。たしかに首に矢がさ
さったのに」
三郎は、ふしぎなことがあるものだ
と思いました。
ぐさっと首にささったはずの矢は、
地面に落ちていました。
矢には、べっとりと血がついています。



「黄金色の鹿は、どこへ行ってしま
ったのだろう」
三郎は、鹿をさがして、山の中を歩
きました。


              つづく



「鹿になった観音さま」は、信州の
伊那谷・「三穂」に伝わっている話
をヒントにして、みほようこが書い
たもの。