鹿になった観音さま10
「何? いとめた鹿が、消えてしま
ったと。三郎さ、夢でもみていたの
ではないのか」
和尚がいいました。
「いいえ、和尚さま。夢なんかみて
いません」
三郎が、きっぱりいいました。
「そうか」
「わしは、その鹿をさがして、山の
中をあちこち歩きました。
そして、大きな杉の木の根元で、こ
の観音さまをみつけたのです」
「ふしぎなことがあったものじゃのぅ。
それで、うちのタケルとチハヤは?」
「それが・・・」
「三郎さ、どうしたのじゃ」
「タケルとチハヤは、石になっていま
した」
つづく