鹿になった観音さま


   鹿になった観音さま14


「観音さま。身の危険を感じたとは
いえ、わしは観音さまの化身である
鹿に矢をむけてしまいました。
どうか、わしをお許しください。
今まで、わしは、たくさんの鹿を殺
しました。



なんて罪深いことをしていたのでし
ょう。今日限り、鹿狩りをやめます。
弓をひくこともやめます。
観音さま、どうかわしをお許しくだ
さいませ」
三郎は、観音さまの前で許しをこい
ました。



「さあ、三郎さ。石になってしまっ
たタケルとチハヤを、裏山へ迎えに
いこう」
和尚と三郎は、裏山へいそぎました。



「三郎さ。タケルとチハヤは、どこ
じゃ」
「和尚さま、ここです」
大きな杉の木の根元に、犬の形をし
た二つの石がころがっていました。


                つづく



「鹿になった観音さま」は、信州の
伊那谷・「三穂」に伝わっている話
をヒントにして、みほようこが書い
たもの。