井戸で鳴く黄金色のにわとり


 井戸で鳴く黄金色のにわとり17


姫も、にわとりを胸にだき、城の
中をあちこち逃げまわりました。
どこへ逃げても、城の中は火の海
でした。



「く、くっ、く」
にわとりが、苦しそうに鳴いてい
ます。
「こっこ。がんばってね」
姫は、にわとりをはげましました。



夜になりました。
「みなのもの、これ以上城にいて
も無駄じゃ。これから、みんなで
故郷の甲斐へもどる。
みなのもの、旅の用意をせいー」
信廉が、城内にいる人々につげま
した。



城にいた人々は、急いで旅の用意
をしました。
「さあ、城を脱出するぞ。みんな
で故郷の甲斐にもどるのじゃ」
そうさけぶと、信廉はみずから城
に火をつけました。
暗闇の中で、ほのおをあげ城がめ
らめらと燃えています。


             つづく



「井戸で鳴く黄金色のにわとり」
は、信州伊那谷の大島城」に伝
わっている伝説をヒントにして、
みほようこが書いたもの。