井戸で鳴く黄金色のにわとり


 井戸で鳴く黄金色のにわとり19


「姫さま」
「姫さまー。どこにいるの」
おつきの人たちの声が、遠くから
聞こえてきました。
三河の兵士たちが、姫をおってき
ます。
姫は、本丸の北方の断崖までおい
つめられてしまいました。



すぐ近くに、城の井戸があります。
深い井戸でした。
姫は、しばらく井戸の囲みの中に
かくれていました。
「こんなところに、姫がいるぞー」
兵士の声がしました。



姫は、これ以上逃げることはでき
ないとあきらめました。
「おとうさま、もう逃げることは
できません。私は、敵につかまり
たくありません。
だから、井戸にとびこもうと思い
ます。



おとうさま、大切に育てていただ
きありがとうございました。
おとうさまと過ごした日々、とて
も楽しかった。
おとうさま、ありがとう」
姫は、信廉にお礼をいいました。


              つづく



「井戸で鳴く黄金色のにわとり」
は、信州伊那谷の大島城」に伝
わっている伝説をヒントにして、
みほようこが書いたもの。