井戸で鳴く黄金色のにわとり21
「姫さまは・・・」
「はっきりいえ」
「姫さまは、井戸に身をなげたそ
うです」
「何? 姫が、井戸に身をなげたと」
「はい」
「なぜだ」
「逃げているうちに、おつきのも
のとはぐれてしまったようです。
そして、三河の兵士たちに、井戸
の所までおいつめられたようで」
「そうか。かわいそうに・・・」
信廉は、そういったままだまって
しまいました。
数日後。
大島城を逃れた信廉たちは、故郷
の甲斐にもどりました。
「わしは、なぜ姫を守ってあげる
ことができなかったのだろう。
今度の戦では、おおぜいの人が怪
我をした。なくなった人も何人も
いる。戦とは、むなしいものじゃ
のぅ」
つづく