井戸で鳴く黄金色のにわとり22
愛する姫をなくした信廉は、戦を
する気力をなくしてしまいました。
「わしの一生は、何だったのだろう。
大切なわが子さえ守ってあげるこ
とができなかった。
戦国の世とはいえ、戦・戦の一生
だったな。
もっとたくさん絵を描きたかった。
短歌もたくさんよみたかった」
信廉は、甲斐の山をみながらつぶ
やきました。
翌月の三月。
信廉は、姫の後を追うように戦死
しました。
同じく三月。
武田一族の大将・勝頼が、天目山
で自害しました。
そして、武田の一族は、あっけな
く滅亡してしまいました。
その後。
姫が身をなげた城の井戸からは、
にわとりの悲しそうな声が聞こえ
てくるそうです。
城址を散歩していると、「こっこ、
おいでー」という姫のやさしい声
が、どこからか聞こえてくるよう
な気がします。
おわり