赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花23


でも、辛いことも多かったなと、犬
坊は思いました。
盛永さまに気にいられたことで、家
臣たちからしっとされ、いやな思い
をしたことも何度もありました。



領民や家臣たちから、盛永さまの悪
口を聞くたびに、くやしい思いをし
たこともありました。
私は、盛永さまに「少しは領民のこ
とも考えてください」と、なぜいえ
なかったのだろうか。
犬坊は、盛永につかえた三年間を思
い出し、複雑な気持になりました。



どのくらいの時間がすぎたのでしょ
うか。 
「お万。お万は・・・無事か」
眠っているはずの盛永が、ぽつりと
いいました。


            つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
書いた物語。