赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花24


「殿様」
「殿様」
犬坊が、盛永に声をかけました。
盛永は、ぐっすり眠っています。
「お万」ということばは、盛永の
寝言だったのでしょうか。



「お万。お万は・・・無事か」とい
うことばを聞いた犬坊は、頭の中
が真っ白になりました。
犬坊は、ぐっすり眠っている盛永
の口から、そんなことばを聞くと
は思ってもいませんでした。



盛永さまは、誰よりもこの私を愛
し、かわいがってくれていると思
っていた。
でも、盛永さまが愛していたのは、
私ではなく、奥がたのお万さまだ
ったのだ。
犬坊の心は、乱れました。


            つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
書いた物語。