赤い夕顔の花


   赤い夕顔の花29


 一方、奥がたのお万は、幼い長
五郎を胸にだき、家臣とともに城
を出ました。
そして、浪合の実家へ向かいました。



お万たちは、下条の兵士たちにみ
つからないように、着古した野良
着をきて、城をでました。
誰がみても、奥がたのお万だとは
思いません。



「再び、この城に戻ってくること
ができるだろうか」
城を出る時、お万は、心の中でそ
っとつぶやきました。



お万は、夫の盛永や長五郎、犬坊
と暮らした日々を、なつかしく思
い出しました。
楽しかったこと、苦しかったこと、
辛かったことなどが、次々と思い
出されました。


             つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこ
書いた物語。