赤い夕顔の花43
「みかけない顔じゃが、どなたじゃ」
「私は・・・」
「奥がたさま。名前をなのっては
いけません」
そうべえが、小声でいいました。
「何、この人が、奥がただと。
どこの奥がたじゃ。こんなうす汚
いかっこうをして、奥がただなん
て聞いてあきれる。
わしでさえ、そんな汚いかっこう
はしない。奥がただなどと、たわ
けたことをいうものではない」
おばあさんがはきすてるようにい
いました。
つづく
「赤い夕顔の花」は、信州の南端
にあった「権現城」に伝わってい
る話をヒントにして、みほようこが
書いた物語。