開善寺の早梅の精4
「うわさに聞く開善寺の早梅を、ひ
とめみたい」
そう思った文次は、そっと戦場をぬ
けだしました。
そして、胸をはずませ、開善寺へい
そぎました。
寺へ着くと、梅の花が咲いていました。
雪のように白い、美しい花でした。
あたり一面に、梅の花のいい香りが
ただよっています。
なんともいえない清らかな香りでした。
「なんていい香りだろう」
文次は、梅の香りにうっとりしました。
早速、一句よみました。
南枝向暖北枝寒
一種春風有両般
(南枝は暖に向かひ北枝は寒し
一種の春風両般あり)
つづく
信州の伊那谷に、「開善寺」という
寺があります。
「開善寺の早梅の精」は、開善寺に
伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いた物語。