開善寺の早梅の精5
文次は、梅の花にみとれていました。
ふと気がつくと、目の前に美しい
女の人が立っていました。
女の人は、いつここへきたのでし
ょうか。
年のころは、二十才。
いや、もっと若いかもしれません。
清楚な、美しい人でした。
女の人は、紅色の着物の上に、白
い上着をきています。
「なんて美しい上品な人だろう。
梅の精みたいな人だ」
文次は、心の中でそっとつぶやき
ました。
「うわさ通り、美しい花じゃのぅ。
香りもすばらしい」
文次は、女の人に話しかけました。
すると、女の人は、にっこりほほ
えみました。
つづく
信州の伊那谷に、「開善寺」という
寺があります。
「開善寺の早梅の精」は、開善寺に
伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いた物語。