開善寺の早梅の精


   開善寺の早梅の精13


文次は、一人ぽつんと、梅の木の
下に立っていました。
梅の花が、月あかりに照らされ美
しくみえます。
何事もなかったかのように、梅の
花の香りが、あたり一面にただよ
っていました。



東の空が、だんだんに明るくなり
ました。
「ちゅん、ちゅん、ちゅん」
すずめのなき声も聞こえます。



「わしは、夢をみていたのだろうか。
美しい上品な女の人、舌がとけてし
まいそうなうまい酒、おいしい料理。
あれは、夢だったのだろうか。



いや、夢ではない。わしは、梅香と
なのる女の人と、たくさんの歌をよ
んだ。ほんとに楽しいひとときだっ
た」
文次は、小声でつぶやきました。


            つづく



信州の伊那谷に、「開善寺」という
寺があります。


「開善寺の早梅の精」は、開善寺に
伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いた物語。



   初めて読んでくれたかたへ


   開善寺の早梅の精1


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20080607#p1



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