瑠璃寺の青獅子


    瑠璃寺の青獅子9


「わしは、この木の中に眠ってい
る獅子を、目ざめさすことができ
るだろうか。獅子よ、どうか一日
も早く目をさましておくれ」
男は、木の中に眠っている獅子に
話しかけました。



木がみつかると、のみやかんなな
ど、木を彫るための道具の手入れ
を始めました。
仕事を始める前には、まず滝へ行
き、不動明王にお参りします。



「わしは、獅子頭をみたこどもが、
びっくりして泣きだすような、そ
んな獅子頭を彫りたい。
どうかわしに力をかしてください」
そう祈りながら、滝にうたれました。



身を清めた男は、数十本ののみを、
一本ずつていねいに研いでいきま
した。
仏師にとって、道具の手入れは、
とても大切な仕事でした。


            つづく



「瑠璃寺の青獅子」は、信州高森
町の瑠璃寺に伝わっている話をヒ
ントにして、みほようこが書いた
物語。



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