白駒の池物語


  白駒の池物語26


「私は、清太さんのことを、うち
の使用人だなんて思ったことは、
一度もないわ。
私、清太さんのこと、ほんとの兄
ちゃんだと思っている」



「おじょうさまの気持はうれしい
けれど、おらはこの家の使用人だ
から」
貧しい家に育った清太は、さみし
そうにいいました。



「おらも、おじょうさまのこと、
ほんとの妹だと思っている。
いや、それ以上かな」
清太は、心の中でそっとつぶやき
ました。



「さあ、おじょうさま。出発しよう」
馬小屋についた時、清太がうれし
そうにいいました。
「清太さん。きよってよんで」
「おらが、おじょうさまのことを、
きよちゃんってよんでいいの」


           つづく



「白駒の池物語」は、信州佐久にあ
る「白駒の池」に伝わっている話を
ヒントにして、みほようこが書いた
物語。