かきつばたになった少女


    かきつばたになった少女1


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20071018#p1




   「かきつばたになった少女」より


「かきつばた、ありがとう。
きすげの花をみることができて、
うれしかった。
もうなにもおもいのこすことはな
いわ」



「おばさま、今日ね、霧ケ峰で山彦
という少年に会ったわ」
「えっ、山彦に?」
おばさまは、驚いたような顔をしま
した。



「おばさまは、山彦さんのことを知
っているの?」
「ええ、よく知っていますよ。
だって、山彦は私が大好きだった人
のこどもですもの」
「えっ?」



「少女のころ、私は霧ケ峰で人間の
少年に会ったの。
そして、その少年と何度か会うう
ちに、おたがいに好きになったわ。
でも・・・今もそうだけれど、人間の
男性と女神は、結婚することは許
されていなかったの。



だから、私はその人と結婚するこ
とをあきらめたわ。でも・・・私は
その人のことをどうしても忘れるこ
とができなかった。
だから、だれとも結婚しなかったの。



その人は、その後おさななじみの人
と結婚したわ。
そして、生まれたのが山彦。
だから、山彦のことは、ずっと気に
なっていたわ」



「かきつばたになった少女」は、
信州の霧ケ峰高原に伝わっている
「かきつばた」の伝説をヒントに
して、みほようこが書いた物語。



童話「かきつばたになった少女」
は、みほようこの四冊目の童話集
「ライオンめざめる」に収録され
ています。





童話集「ライオンめざめる」は、
2006年10月、「鳥影社」か
ら発行されました。
信州諏訪の「風の神様」から聞い
たお話が、三つのっています。


   ・ライオンめざめる

   ・笛の音よ、永久にひびけ

   ・かきつばたになった少女