昭和60年代の歌27


木曾見茶屋の峠に立てば若葉の谷と

   猫柳の綿毛舞ひあがりくる



生き形見と笑ひくれたるエプロンをかけて

   友の葬りの手伝ひをする



空梅雨の続く朝の畑隅に

   色深まりし赤紫蘇をつむ



在りし日に夫の植ゑたるハナノキの

   木陰に憩ふ墓掃除終へて