開善寺の早梅の精


   開善寺の早梅の精6


 ひびきゆく鐘の声さへ匂ふらん

   梅咲く寺の入り相の鐘



「この寺では、鐘の音までも、梅
の香りに満ちている」、こんな意
味の歌でした。


 
女の人は、軽く会釈をすると、す
ぐ歌を返してきました。


 ながむれば知らぬ昔の匂ひまで

   おもかげ残る庭の梅が枝


女の人は、「昔の美しかった花の
おもかげまで、この梅には残って
いるようです」と、よんだのでし
ょうか。



「すてきな歌ですな。ところで、
あなたの名前は?」
「梅香といいます」
「梅香さん・・・か。あなたは、この
梅のように美しい」
「美しいだなんて・・・。あなた
の名前は?」
「わしの名前は、埴科文次。武士
じゃ」


            つづく



   昨日の分は、こちら。


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